あるべきウリマルの姿 異国で言葉守る意味

大阪、愛知、広島の4団体20日、大阪で演劇祭


 同胞社会の中で世代交代が進むにつれ、ウリマル(朝鮮語)の「日本語化」が加速化している。そんな中、20日に大阪市立北区民センターで在日同胞ウリマル演劇祭「PAN(場)」が開かれる。同胞社会におけるウリマルの現状を再確認し、21世紀のあるべきウリマルの姿を探るのが目的。民族教育を応援するためチャリティーで行われる同演劇祭には、文芸同大阪・演劇口演部、大阪の在日同胞劇団「プルナ2000」、愛知のウリマルサークル「イッポ」、広島県青商会演劇部「ナミ21」から総勢40人が出演する。「在日同胞が民族の一員として存続し続けるための生命線は、歴史、現実、希望、精神世界をウリマルで表現すること。とくに朝鮮学校の生徒や教員、若い同胞学父母らに見てもらい、同胞社会でウリマルを復活させる契機にしたい」と、実行委側は意気込みを見せている。

 文芸同大阪・演劇口演部は、1999年に第1回公演「旗」、2000年に第2回公演「道」を成功させた。現代劇と時代劇、漫才、詩の朗誦、話、昔話、民族音楽、民族舞踊など総合的な公演スタイルを打ち出し、同胞らの支持を得てきた。今回は、「夢のPAN(場)を開く人々」と題し、ウリハッキョ(朝鮮学校)を舞台に結ばれた師弟間の心温まる物語をつづることで、ウリマルと同胞社会のあり方を探る。

文芸同大阪・演劇口演部(上)と広島県青商会演劇部「ナミ21」(下)の練習風景

 「プルナ2000」は、昨年の第2回アジア演劇祭に参加したほか、マダン劇「プルガサリ伝説」、1人芝居「キム」「統一旗」などの上演活動に取り組んでいる大阪の在日同胞劇団。6.15共同宣言発表以後はとくに、統一運動を盛り上げる企画に取り組んできた。青商会のウリ民族フォーラムでは、「祭祀―クンジョル」(愛知)、「ヒロシマ・ヨロブン」(広島)などをプロデュース。昨年はNHK大型ドラマ「聖徳太子」に百済渡来人役として出演した。

 今回は、「キッ―DNA」と題し、日本語、「在日同胞式ウリマル」、ソウル語、ピョンヤン語という4通りの台詞を使い分けることによって、在日同胞を取り巻く言語状況をリアルに描く。そして、新しい世代の体内にも宿っている民族の「キッ―DNA」、すなわち1世の言葉には北も南もなく、ひとつの民族としてのウリマルだけがあることを訴える。

 愛知の「イッポ」は95年に結成された。1世から取材したウリマル(慶尚道訛)を使って97年、朝鮮人強制連行真相調査団による証言集の出版記念会で「テマンハルモニのおはなし」を初上演。以後、「われらの4.24」「統一を願うウリエソウォン(われらの願い)」「温達伝」「アマガエル」「檀君神話」などの作品を各地のウリハッキョや日本学校で上演してきた。今回は「テマンハルモニのおはなし」を披露する。「イッポ」は、ハッキョを応援する運動、朝鮮人強制連行真相調査事業のほか、6.15共同宣言を支持する統一運動にも積極的に取り組んでいる。

 広島県青商会演劇部「ナミ21」は、21世紀最初のウリ民族フォーラムで演劇「ヒロシマ・ヨロブン」を成功させた。原爆投下を前後する波乱万丈の時代を劇的に生き抜いた1世の一代記を舞台化したこの作品で、同胞演劇の1つの道標を示した。今回は、ウリマル改訂版を初めて上演。1世のウリマルを生かしつつも、訛ではない当時の標準的なウリマルを使い、1世から若い世代へと引き継がれる普遍的なウリマルのあり方を表現する。(羅基哲記者)

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 演劇祭は20日(土)、大阪市立北区民センターで行われる。午後6時開場、6時30分開演。入場料は一般=前売2000円、当日2500円、学生=前売1000円、当日1500円。チケットの購入・問い合わせは同実行委(TEL 06・4960・4925)まで。

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