よりよいウリハッキョを−現場の取り組み−(9)

民族的情操豊かなオリニに

小倉朝鮮幼稚園 朴日善園長


同胞たちの熱意

 1970年代まで、小倉を中心とした地域同胞が子どもを朝鮮幼稚園に通わせるためには、八幡にある北九州初中付属幼稚班に送るしかなかった。しかし、通園に1時間半以上かかるため、幼児には負担が大きすぎた。

 そこで「幼少期から民族教育を」という地域同胞の熱意のもと、1980年に単設幼稚園として設置されたのが小倉朝鮮幼稚園だ。以来22年間、本園愛園会が独立採算制を原則として運営。運営予算の不足分は、そのうちの90%を総聯小倉支部が、また門司、戸畑支部が力を合わせて負担してくれた。

お遊戯会で出番を待つ園児たち(昨年12月16日)

 幼稚園教育に対する地域同胞の熱意は非常に高いと言える。というのも、民族教育において、民族心を与える1番初めのプロセスとなる幼稚園教育が、その後の成長過程に大きな影響を及ぼすことを認識しているからだ。

 先日も、老朽化した通園バスを買い換えるための募金運動が全同胞規模で提案され、広がっていった。総聯小倉支部白銀分会が、長年貯蓄した分会事務所1階の賃貸料700万円を寄付してくれたのをはじめ、延べ250余戸の同胞が「幼稚園のために」とバス購入運動に力を注いでくれた。そのおかげで、本園では園児用の小型と中型バス2台を購入することができた(北九州初中には大型バス1台が寄贈された)。

 そのほか、地域青商会はチャリティーコンペを開き新入園児に制服を、朝青はボーリング大会を開き遊具を寄贈してくれた。

 下関初中、北九州初中を経て本園に赴任して1年だが、園児たちが何1つ不自由なく民族教育を伸び伸びと受けられる環境を地域同胞が一丸となって作ってくれていることに驚き、感動させられる毎日だ。

幼い心に民族を

 こうした同胞たちの熱意は、「幼い心に民族の種をまき、すくすくと育てたい」という願いから出たものだ。その期待に応え、在日同胞社会の未来の主人公を育成するために、本園では「遊び」を通じて民族性を養う「ウリ式総合保育」を基本にしながら、@民族的情操が豊かA元気一杯で積極的B何事にも一生懸命がんばるオリニ(子ども)を育てるという、独自のキャッチフレーズに沿った保育を行っている。

 例えば、「ウリ幼稚園ならでは」の「ウリマル教育」。園児が育てたキュウリを使ってオイキムチを、園庭になる柿を使って干し柿を作って味わい、そして「おいしい」は「マシッタ」、「甘い」は「タルダ」などと教える。生活の中での実体験を通して、家庭教育や日本の幼稚園では手の届かない「生きたウリマル」を身につけられるよう力を注いでいる。

 また、民族衣装を着て朝鮮の歌や踊りを踊る、チャンダンに合わせてリトミックをするなど、五感を通して民族性を培えるようにしている。朝鮮人として成長していくうえで、しっかりとした土台になると思う。

 そのほか、異年齢児を触れ合わせる「縦割り保育」も行っているが、少子化で目上、目下の者との接触が少なくなっている今の子どもたちにとって、園児の社会性、協調性を育てる大切な場となっている。

 目標は、園児一人ひとりの中に潜む「ウリ」を引き出すこと。そのためにも個々の家庭とも密に連絡を取り合いながら保育の質を高めていきたい。

園児減少対策

 ほかの教育機関同様、本園でも頭を悩ませているのが園児の減少だ。全盛期の80年代には40余人いた園児が近年30人を切るようになってしまった。その原因は少子化、遠距離通園、また若い世代の組織離れにあるように思う。

 本園では少しでも現状に歯止めをかけるための対策として、幼稚園入園前の子どもを持つ小倉地域オモニたちのサークル「タンポポクラブ」との交流を積極的に行っている。

 運動会やお遊戯会など園で行う行事には親子で招待し、まずはウリ幼稚園について知ってもらおうというのが狙いだ。昨年は、園オモニ会手作りのウリマルでのペープサート劇「3匹のコブタ」が好評だった(ビデオあり、貸出可)。

 保護者の負担を軽減するため、行政にも引き続き働きかけていくつもりだ。

 本園には、近隣の日本の小学校や高齢者団体からの交流要請が絶えない。園児たちがチマ・チョゴリを着て、朝鮮の歌や踊りを立派に披露する姿に感動して涙を流す日本の人もいる。「小倉朝鮮幼稚園は北九州地域の財産だ」という彼らの言葉に、私たちは、民族教育に対する自負でいっぱいになる。

 これからも、このような交流を通して地域の理解を得ていきたい。そして本園が、子どもたちの未来の可能性をよりいっそう広げてあげられる場になればいいと思っている。(おわり)

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