私たちのうた

崔南善


花におもう

 わたしは 花が好きだ
 だけど あのあでやかな姿に目が奪われ
 あのかぐわしい香りに鼻がほれ込み
 ただやみくもに花をおもうのではない
 刃のような爆風を熱い精気に
 無情な殺気を深い愛情に
 置き換え
 痛みに押さえつけられ 血も凍る雪のなかに埋められていた
 数億万の生命を掘り出し 引っ張り出し 救い出す
 春の風の 象徴だから
 わたしは 花が好きなのだ

 わたしは 花が好きだ
 だけど あの平和な笑顔に魅せられて
 あのきらびやかな姿をうらやんで
 ただみだりに花をみるのではない
 外見が美しいものほど中身がないものが多く
 初めは素晴らしくても終わりはそうでないものが多い中で ただひとつ
 ささやかな平穏に心休めることもなく 様々な苦難にもめげず
 数億万の生命を創りだし ふやし 深くつなげる
 種と実を もっているから
 わたしは 花が好きなのだ
(「韓国の名詩」収録、1909・5)

 チェ・ナムソン 1890〜1957。雑誌「少年」創刊。新文学3大天才のうちの1人と称せられる。(訳・全佳姫)

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