閑話休題

母への花束

舞踏を通じて友好の輪を


 「子は親の背を見て育つ」という言葉がある。しかし、幼い子供にとって母親の存在は、格別なものであることは言うまでもない。

 先日、東京で開かれた金有悦さんの舞踊リサイタル「舞心――願いを込めて」は、大盛況の中で幕を閉じた。民族舞踊の伝統的要素とモダンな創作舞踊によって構成された舞台に、多くの観客が魅了された。鳴り止まない拍手。その中で、人知れず涙を拭う年配女性の姿があった。義母、尹季珠さんである。彼女は、長年東京朝鮮歌舞団の舞踊家として活躍してきた金さんを温かく見守り、支え続けてきたひとりである。

 「(金さんの)苦労を思うと涙が止まらなかった」と、尹さんは目を赤らめた。休日や祝日でも同胞の祝い事があれば駆けつけるのが歌舞団の仕事。子供たちのことを思うと、居たたまれない気持ちになることもあったのだろう。尹さんは、この日の公演を見て「安心して見れた良い舞台だった」と安堵の表情を浮かべた。結婚当初の踊りと比べ、より安定し、味わい深い感があったのだと言う。

 フィナーレの際、舞台には、喝采を浴びる母親に花束を捧げる兄妹の姿があった。思わず金さんの顔に笑みがこぼれる。

 「朝鮮舞踊をバレエやフラメンコのように日本でも広め、もっと気軽に楽しんでもらいたい」と、金さんは話していた。なぜならそれは、「朝鮮を理解し、日本で暮らしていく私たちがより良い環境で暮らすことにつながるから」。金さんのその思いは、きっと子供たちにも伝わっているのだろう。(潤)

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