くらしの周辺

「卒業式の日に」


 朝鮮大学校の卒業式は実にいい。日本の大学の卒業式には参加したことがないので比較の仕様もないが。

 今年の私の担当は2部の祝賀宴で、朝から宴会場の整備に始まり司会の打ち合わせなどと忙しく立ち働いていた。

 学部長による祝賀宴の開会宣言に続き会食、頃合いを見計らって学生司会が登場、和気あいあいとした雰囲気で宴会は進行した。幾人かの卒業生が紹介された後、ある卒業生がオモニを伴って登場し「オモニに捧げる手紙」を読み始めた。

 「愛するオモニ、女手ひとつで僕たち兄弟を育ててくれて心から感謝しています。…僕が朝鮮大学校に入学した後、よく電話をくれましたね。『ご飯はちゃんと食べているの?』『寒くないかい?』と。その度に切ないくらいにオモニのやさしさを感じてきました。

 オモニ、僕をウリハッキョ(朝鮮学校)に通わせてくれて本当にありがとう。おかげで僕は今、この両腕では到底抱えきれないほどの大きな大きなアボジと出会うことができました。わが祖国、わが組織、尊敬する先生方、みんな僕を大きな懐に包んでくれるかけがえのないアボジです。そして僕にはともに助け合って生きていけるたくさんの友がいます。それに愛する女性も…」

 涙と笑いと拍手が場内を駆け巡った。その時、私の脳裏に朝鮮大学校の卒業式に学父母として参加したいという強い思いがよぎった。娘の顔が目に浮かんだ。来年やっと初級部に入学するあどけない娘の笑顔が。(崔権一・教員)

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