アラブ諸国、米国の対イラク戦に反対

ドイツ、フランスなどEU諸国も


 米国のブッシュ大統領が、対テロ戦争が第2段階に入りイラクへの攻撃を辞さないと発言したことと関連し、中東諸国をはじめとする世界各国が非難の声を高めている。

 チェイニー副大統領は10日から、英国を皮切りにヨルダン、エジプト、イエメン、UAE、サウジアラビアなどアラブ諸国を歴訪し、米国のイラクへの戦争拡大の必要性を説きつつ、戦争突入時の支持と協力を要請した。しかし現在のところ、英国を除くすべての国から支持を取り付けることができず、ブッシュの「イラク包囲網」は事実上崩壊したといえる。

 「ワシントン・ポスト」やCNNなどは17日、チェイニーの中東歴訪前半を振り返り、今回の中東訪問でチェイニーはイラクを対象にした対テロ戦略を説明したものの、サウジアラビアの強力な反対をはじめ、ほとんどのアラブ諸国の指導者からかえってイラクとの戦争に対する反対の意見を聞いたと報じた。

 チェイニーは今後、カタール、クウェート、イスラエル、トルコなどを歴訪する予定だが、イスラエルをのぞいた国々も反対の立場をとることが予想されている。また、フランスやドイツなどのEU諸国は「何らかの国連決議がない限り、イラクとの戦争には参加しない」としており、米国の対イラク戦争をけん制している。ロシアのイワノフ外相もイラクに大量破壊兵器がないと判明した場合、制裁措置を解除しなければならないとしたうえで、「仮にイラクがそのような兵器を持っているのであれば、その時は国際社会が新たな措置を講じるべきだ」と述べている。

 また12日には、トルコのイスタンブールでEUとイスラム会議機構(OIC)外相との会議が開かれ、双方の理解と協力を深めるための意見交換がなされた。

 一方、米国の対イラク戦に賛同している英国内でも、イラク攻撃の正当性について疑問視する声があがっている。週刊誌「オブザーバー」は17日、「われわれはサダム・フセインと戦争をしなければならないのか?」としながら、米国がイラク攻撃の口実としているものが説得力に欠けるものと指摘した。

 にもかかわらずブッシュは、21日からメキシコで開かれた国連開発国際会議に参加し、対テロ戦に対する米国の「断固とした立場」を引き続き表明し、国際的な支持を取り付けようとしている。

 ブッシュはしきりに「将来予想される脅威」をうんぬんしながら、イラクとの戦争を引き起こそうと躍起になっている。しかし、前でも述べたように世界中のほとんどの国が対イラク戦を反対しており、ブッシュが態度を改めない限り非難の声はますます高まるだろう。

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