「核態勢再検討」秘密報告書明るみに
ブッシュ政権の狂気じみた核攻撃計画
核を「抑止力」から「戦争の道具」に
ブッシュ米政権が朝鮮や中国、ロシアをはじめとする国々に対し有事の際、核兵器による攻撃を辞さないという緊急対策計画を樹立していたことが明らかになった。核兵器は、抑止力ではなく攻撃の手段であると言い放つブッシュ政権の姿勢は、超大国米国の核政策をより危険な方向に大きく進め核戦争の危険を現実的に増大させる、許しがたい暴挙と言わざるを得ない。世界を核戦争の危険にさらすブッシュ政権の狂気じみた横暴はどこまでエスカレートするのか。世界が懸念し非難している。
小型核兵器開発へ 10日付のロサンゼルス・タイムスによると、米国防総省は今年の1月8日、米議会に「核態勢再検討」秘密報告書なるものを提出した。報告書の中で国防総省は朝鮮、中国、ロシア、イラク、イラン、シリア、リビアなど米国にとって「脅威」となる7カ国を名指しし、これらの国々に対する核兵器使用計画を練っていることを明らかにした。 また、地下施設など特定の対象物や戦闘で使用するための小型核兵器開発の必要性を説きながら、来月から研究を始めると同時に核実験再開の必要性についても強調した。報告書では核兵器を使用する状況として、◇非核攻撃に耐えうる目標物への攻撃◇核および生化学兵器による攻撃に対する報復◇不意の軍事的状況――などをあげながら、「北(朝鮮)による南への侵攻」「中国による台湾への攻撃」「イラクによるイスラエルおよび周辺国への攻撃」など具体的な事例まであげている。 非核国に対して核攻撃を行わないというのが核不拡散条約(NPT)の前提である。核保有国、非核国を問わず核攻撃を辞さないというブッシュ政権の姿勢はNPT体制を根底から揺るがさざるを得ない。報告書で名指しされた国はいずれもNPT加盟国であり、核使用は「最後の手段」と強調してきたこれまでの姿勢とはかなり違ったものとなっている。今回の報告書は先制攻撃のシナリオ作りを明確に打ち出したことで、いわば核使用の敷居を相当に低くしたということで、NPTの精神に反するものといえる。 ブッシュは9・11テロ事件後、ミサイル防衛計画推進のためロシアとの間で締結されていた弾道ミサイル(ABM)制限条約からの脱退など一方的な安保政策をとっている。今回もかなり自国優先的なものであり、この報告書によって「抑止力としての核」という概念が薄れたことで、国際的な核競争の再燃へとつながりかねない。 また、南に大量の核兵器を配備している米国が報告書で朝鮮を核先制攻撃の対象に指定したことで、朝鮮半島での核兵器使用が現実に起こりうる可能性が高くなったこととともに、報告書が南北関係にも相当な障害になることが予想される。 高まる国際的非難 「去る1月に米議会に提出された報告書は、米国が核抑止ではなく核先制攻撃戦略に転換したことを示唆している。人類を破滅へと導く核戦争企図を即時中断せよ!」 12日に南の米大使館前で行われた反米連帯集会の参加者たちは、「梅香里、米軍犯罪、毒劇物事件など米軍問題はこれまで何一つ解決していない」と指摘しながら、一方的なブッシュの政策を厳しく非難した。 今回の報告書が明るみに出たことで、南をはじめ世界各国が一斉に米国を激しく批判している。 ロシアのイワノフ外相は11日の記者会見で、「われわれは国際社会を安心させるため、米国の高位官吏が何らかの声明を発表し、明確な解明がなされることを期待する」としながら、「仮に今回の報道が事実であれば、国際社会から憂慮と遺憾の意を呼び起こすことになるだろう」と付け加えた。 イランのハタミ大統領も11日、テヘランを訪問中のボスニア外相との会談で「米国はイランを『悪の枢軸』と非難したが、歴史は誰が対話を促し誰が暴力に訴えているかを判断するだろう」と米国を非難した。 一方、米国内でも「この核政策によって軍事的に得るものが多少あるにしても、外交的には失うものがかなり多いだろう」(ニューヨーク・タイムス)、「米国は核を抑止手段ではなく戦争の道具にしようとしている。この戦略は他国の核兵器開発を促し、世界を危険で不安なものにするだろう」(カーネギー財団核兵器専門家・シリンシオン氏)など、ブッシュの安保政策を危ぐする声が高まっている。 今回の報告書は21世紀を核戦争の時代にするものとして世界中から非難を浴びている。折しも、鉄鋼製品へのセーフガードを発動したことで、安保政策はもとより経済政策でもブッシュの一国主義が際立ってきた。ブッシュは、世界の流れを無視して世界を支配しようという夢からそろそろ覚めなければならない。 |