取材ノート
力をくれた婦人の一言
マスコミ報道による、人権侵害問題を考える市民たちの会がある。元共同通信記者で現在、同志社大学教授の浅野健一さんが世話人となり、毎月1回、各分野での実例を取り上げて勉強会を続けている。
その事務局(〒168東京都杉並南郵便局私書箱23号)が発行する会報「人権と報道連絡会ニュース」が2月で169号になるので、単純に計算しても10年以上も続いていることになる。息の長い会である。 参加者は30人程度だったが、最後まで席を立たずに耳を傾けるその真剣なまなざしと、レポート後の意見交換の場を通じて、日本の市民運動は健在なのだな、ということを実感した。 その帰り道、会に参加していた60歳過ぎの婦人から声をかけられた。 駅までの5、6分の道程、その婦人は、毎日、横須賀基地のゲート前で戦争反対、基地撤去のプラカードを持って活動を行っていることを記者に告げながら、たとえ1人になっても理に反することには立ち向かっていかなければ、社会は力を持った人間たちのやりたい放題になってしまう、と語るのだった。 そして、別れ際に「妹と2人、朝銀がんばれの思いを込めて、多くはないけれど預金をしています。本当に大変な時期だけれども、がんばっていきましょう」との言葉を残して、改札口に消えていった。 人間、窮地に立った時にこそ友人の意味がわかるとは、よく指摘されることだが、結成以来、半世紀以上が過ぎた朝鮮総聯の運動の財産の一端をかいま見たようで、あらためて婦人の言葉ではないが、「がんばらねば」と自問自答、呪文を唱えるように頭の中でその言葉を繰り返しながら帰途についた。(彦) |