同胞社会の「今」自分の目で描く

唯一のウリマル作文コンクール「コッソンイ」今年で24回目


2月23日、東京で行われた「コッソンイ」の表彰式
 本社が主催する在日朝鮮学生「コッソンイ」文学作品コンクール(在日本朝鮮人商工連合会など9団体が後援)が今回で24回を迎え2月末、東京で表彰式が行われた。「コッソンイ」は朝鮮学校に通う児童、生徒たちを対象にした唯一のウリマル(朝鮮語)作文コンクール。応募資格は朝鮮学校の初級部3年生以上高級部まででテーマは自由。審査は初・中級部は学年ごとに、高級部は1〜3年一緒に、それぞれ散文と韻文の部門別に行われる(初3は散文のみ)。今回は1531編の応募作品中、97編が入選した。応募作品のテーマは家族、自分自身、学校生活などさまざまだ。今回、1等を受賞した9編の作品にも子どもたちの「目」を通じたさまざまな発見が散りばめられていた。

新しい校長先生

 初3部門1等に輝いた梁響秀くん(静岡初中)の作品、「あのおじさんは校長先生に間違いない!」は「完成度が高い」と評価が高かった作品だ。

 梁くんの作品は、新しく赴任してきた校長先生との触れ合いを描いたもの。運動場で草むしりをする校長先生の姿に疑問を抱き、「なぜ運動場に」と質問する。校長先生は「学校は私たちの家、先生はこの家のアボジ。だからきれいに掃除するんだよ」と答える。

 校長先生との会話を的確なウリマルで表現し、心温まる学校の風景を描いた。

 中1散文部門1等の高順英さん(東大阪中級)の作品「明日、明日と言わないで」は、朝鮮語の先生が昼夜を惜しんでウリマルを学ぶ姿に触発され、統一にそなえてウリマルを一生懸命学ぶ決心を固めた過程をつづった。

 中2韻文部門1等の朴真実さん(千葉初中)の作品「空はモッチェンイ(かっこつけること)」。真っ青な空を「青い布」、星空を「真珠」といった具合に空の表情を独特な表現で描いた点が「斬新だ」と評価された。

オモニ、アボジ

 アボジ、オモニを描いた作品も多かった。初6散文部門1等の金珠沙さん(下関初中)は、運動会でのアボジとのひとこまを「アボジと一緒に」という作品につづった。

 アボジとともに障害物競走に出場した金さんのほっぺたにアボジはキスをする。その瞬間、恥ずかしさでアボジに腹が立ったが、時間がたつにつれアボジの愛情に気づいた金さん。「年頃の娘とアボジとの微妙な関係が伝わってきた」と評価された。

 また、初6韻文部門1等の盧明姫さん(千葉初中)は「私は天気予報士」という詩でオモニを描いた。買い物を嫌がると「ビュービューと吹き荒れる爆風」、10点満点の答案用紙を持って帰ると「そよそよ吹く春風」とオモニの気持ちを天気にたとえた。

 中3散文部門1等の姜昌求さん(北九州初中)は、作品「銀メダル」で「オモニ観」が変わった話を書いた。

 日本人であるオモニに引け目を感じていた姜さん。そんなある日、オモニは姜さんが所属するバスケットボール部の後援会の責任者に選ばれる。試合の連絡、会議の運営、会報の発行…。ウリマルも精力的に学びながらウリハッキョのために必死に頑張るオモニを見ながら、自分を反省するようになった。

一石投じる作品も

 高級部散文部門1等の李章妃さん(大阪朝高1年)は、ボクシング世界チャンピオンの洪昌守選手を通じて自分の考え方が変わっていった過程を「唯一の共通点」という作品にまとめた。

 朝鮮籍であること、朝鮮学校に通っていること…。日本社会で生きていくうえでこれらのことはすべてマイナスに作用し、自分の希望を叶えることができないのではないか…。李さんは中級部卒業を控えた頃、「朝鮮人であることが嫌」で日本の高校への進学を考えていた。

 そんな彼女はある日、大阪で洪選手の防衛戦を観戦する。

 初防衛に成功した彼の姿に勇気と希望を得て、差別に卑屈になっていた自分を顧みるようになった。「朝高生が抱える矛盾に一石を投じた傑作」と評価された作品だ。

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 これらの作品は、民族教育の核と言えるウリマル教育に日々力を注ぐ朝鮮学校教員の努力のたまものであると同時に、今を生きる子どもたちの「目」から見た同胞社会の「今」を見せてくれるものだ。

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