閑話休題

後世に伝えたい

元気な地域の女性たち


 先日紙面で紹介した、兵庫県初の女性校長経験者の李玉禮さんに初めて出会ったのは、もう5年も前のことになる。温和な人柄と、眼鏡の奥でにこにこと微笑む優しい眼差しが印象的だった。

 長年教員をしてきた「ハルモニ先生」が、校長を務めたこともあると知ったときは、本当に驚いた。校長といえば「男がするもの」と思い込んでいたからだ。

 植民地支配下の朝鮮で過ごし、民族差別のひどい日本で、数々の困難を乗り越えてきた「ハルモニ先生」の話は、まさに「在日同胞史」そのものだった。話を聞きながらしみじみ感じたのは「人間、そんなに弱くはないんだな」ということ。

 解放後、故郷に帰りたくても帰れない寂しさと、夫を待ちながらの貧しい生活の中で、一時ノイローゼにかかるほどか弱かった女性が、後には校長となって朝鮮学校を守り、民族教育を守りながらひたむきに生きていく姿には、歳月が過ぎても色あせない輝きがあった。

 話の端々で李さんが、同胞たちと強いつながりを持つことの大切さを強調していたことも印象深かった。「同胞大衆あっての教育であり、運動である」。苦しい生活の中で、愛する子供たちのために「砂場は私が作る」「トイレは私が」と、身を持って学校の補修工事に精を出してくれた親たちの姿は心の支え。李さん自身、同胞たちの心温まる協力に、幾度熱いものが込み上げてきたかわからないという。

 「1世の生きてきた辛い過去を忘れないで」という李さんのメッセージが、若者たちの胸に響いてほしいと思う。(潤)

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