医療−最前線

高齢者の入浴死


 冬の楽しみは、暖かい風呂。外のシンシンとした寒さを横目に熱い風呂につかり、その後、ビールを一杯、といきたいもの。でも、ちょっと待って下さい。

 このところ高齢者の入浴事故が増えているので注意を。これまで考えられていた心臓病ではなく、熱中症の一種で、体温上昇と血圧障害が原因になっていることが、最新調査で明らかになってきた。

 堀進悟・慶応大学助教授(救急医学)が日本救急医学会関東地方会で報告したところによれば、亡くなる人だけで全国で年間1万4千人にものぼるという。堀さんは事故の再発防止策として「お湯の温度を低く、入浴時間も短くし、家族がひんぱんに声をかければ死亡は妨げられる」としている(朝日新聞02年2月16日付)。

 東京消防庁の救急車が99年10月から半年間に出動した入浴事故は東京23区内で1087件。その内、578件(約53%)は、救急車の到着時にすでに心肺停止状態だった。253件(23%)は、家族や隊員によって浴室から助け出されている。

 入浴死は欧米にほとんどなく、高温・全身浴の日本がずば抜けて多い。これまでは、入浴中の血圧上昇による心臓病と脳卒中、水死が3大原因といわれていたが、堀さんは「高温浴による熱中症」と結論づけた。

 熱中症は炎天下で体温が高くなって脱水し、血圧が下がり、意識を失う。高温、長時間の入浴で体温が上昇すると、同じしくみで意識障害が起きて、浴槽内で倒れたり、おぼれたりする。お年寄りと暮らす家族は、気配りを忘れないようにしましょう。(李秀一・医療従事者)

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