人権セミナー「朝銀問題を考える集会」
事実ねつ造、マスコミにリーク
弾圧を既成事実化、不当な強制捜索、逮捕
集会では康元財政局長の担当弁護士らが逮捕の不当性について報告した | 会場では質疑応答も行われた |
在日朝鮮人人権セミナー(実行委員長=床井茂弁護士)が主催する「差別と偏見の朝鮮人弾圧を考える集会―朝銀事件を検証する―」が14日、東京・霞ヶ関の弁護士会館で行われた。集会では昨年11月29日の総聯中央本部に対する強制捜索と、その前日に行われた康永官・元財政局長逮捕の不当性について、事件の担当弁護士である古川健三、稲葉不二男氏らが報告した。両氏は康氏の無罪を勝ち取るためにたたかう意思を表明しながら、今後もこのような集会を重ね、真実を伝えていこうと呼びかけた。なお同日、東京地裁で康氏の初公判が行われた。
不法、「無罪を」 古川弁護士はまず、康氏が公判の罪状認否で無罪と逮捕の不当性を主張したことを参加者に報告した。 そして、法廷で総聯中央に対する強制捜索の目的について「朝鮮民主主義人民共和国、総聯および在日朝鮮人に不当なレッテルを貼り、偏見を助長させるためのものだ」と述べた康氏の主張と、弁護団のスタンスは一致していると確認した。 古川弁護士は、康氏は朝銀東京の元理事長、副理事長らとともに業務上横領罪で起訴されたが、その逮捕、勾留、起訴は不当、不法なものだと指摘。康氏の逮捕と総聯中央本部への強制捜索は、捜査当局や公安当局が犯罪の嫌疑がないと知りながら意図的に踏み切ったもので、同本部への嫌疑を既成事実化することが目的だったと指摘した。 また稲葉弁護士は、康氏は問題とされている口座の存在すら知らなかったにもかかわらず、警視庁捜査2課があたかも康氏が仮名口座を使って朝銀の資金を流用したかのようにマスコミに意図的にリークし、事件化したと強調。こうした事実を確認せず、逮捕を強行した捜査当局や令状を発行した裁判所に対する疑念を表明した。 両弁護士は、朝鮮と国交のない日本で大使館の役割を果たしている総聯中央会館への捜索がいとも簡単に行われた問題性を重ねて強調しながら、国際法、刑事訴訟法に反する今回の逮捕と強制捜索の違法性を法廷で問うていく意思を表明した。 徹底してたたかう 続けて同セミナー事務局長の前田朗・東京造形大教授が、事件が起きた政治的な背景について講演した。 前田教授は、公安調査庁による外国人登録原票不当入手、日本政府による在朝植民地被害者のなど、在日朝鮮人や朝鮮に対する差別と偏見を助長させた最近の事件を列挙した。 とくに米国におけるテロ事件以降、日本政府が戦争参加への道を開く有事法制を着々と進めていると指摘しながら、一連の朝鮮人弾圧は日本の軍事大国化と密接な関連があると強調した。 前田氏は、平和に逆行する日本の政治状況を変えるためには、朝銀事件に象徴される朝鮮人弾圧を世界的な枠組みのなかでとらえ、足元の連帯の輪を広げていく必要があると指摘。裁判で無罪を勝ち取るため、今後もこのような集会を開いて真実を伝えていこうとよびかけた。 事実の検証なし 報告後、会場では質疑応答が行われ、真実を伝えないメディアの問題点や、在日朝鮮人、総聯に対する弾圧に批判の声があがらない日本の社会状況について警鐘が鳴らされた。 まとめのあいさつをしたセミナー実行委員長の床井茂弁護士は、現在の状況は総聯の前身である朝聯を解散させた朝鮮戦争前夜の状況に酷似していると述べ、このたびの強制捜索も「総聯=悪、強制捜索は当然」という捜査当局の論理を押し通したもので、事実の検証なしに在日朝鮮人への弾圧が行われることに大きな問題があると強調。権力の乱用に対して徹底して反対の声をあげようと主張した。 |