それぞれの四季

引越し

ウォン・ヂョンヒ


 引越しをした。新宿区高田馬場駅近、日当たり抜群。でもユニットバスで築20年の割に高い。打率は1割ちょっと。ここでの打率とは、不動産屋での断られなかった割合である。

 初めて家を借りた練馬区では3割ほどの打率だった。職場の同僚に連れていかれた最初の不動産屋では若い茶髪兄ちゃんが担当となった。姉御肌な同僚が、私の名前、会社名、条件などを言い尽くすと、兄ちゃんは「朝鮮人? 日本語しゃべれるの?」とまず聞いてきた。私は不快感をおくびにも出さず、「在日3世」について簡潔に説明。分厚いリストの中から気に入った物件を数件チェックすると、兄ちゃんが大家もしくは管理会社に電話。「外国人ですけど、戸籍は日本で…」。違うって! で、再度説明。兄ちゃんもリトライ。しかし私が選んだ物件は全部アウト。少し条件を妥協しても駄目。日本人の同僚は困惑していた。すでに閉店時間が過ぎ、兄ちゃんも焦っていた。

 「だから、日本人と見た目変わりないですよ。ちゃんとした会社勤めで、身なりもこぎれいだし」と、客の目の前で差別発言までも出てくる。こんな兄ちゃんが担当では決まるわけもなく、その日は諦めて、同僚と食事をしながら総括した。「日本ってほんと閉鎖的だよね。恥ずかしいよ。でもあの不動産屋さんみたいに理解ある人もいるから」。うーん、ちょっと、いやだいぶ違うような…。あれから3年、今回の家も似たような体験と妥協を繰り返した。

 この「打率」、イチローの打率並に、日本人が関心を持ってくれればいいのになあ。(医療生活協同組合職員)

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