よりよいウリハッキョを−現場の取り組み−(1)
原点に戻り対象者掘り起こし「チョソンサラムを育てる」
東京第4初中 金龍河校長
昨年5月の総聯19全大会は、21世紀に「仲むつまじく豊かで力ある同胞社会」を作っていこうというビジョンを示し、そのためにも、在日同胞の尊厳を守り育む民族教育の重要性を強調した。しかし、生徒数減少や財政など、朝鮮学校の現状は大変厳しい。現状を打開し、朝鮮学校を守り発展させるための現場の取り組みについて、各地の学校、教育会の担当者に話を聞いた。
「10人台」のショック 同胞密集地の足立区に位置する本校は、90年代に入って毎年5、10人ずつ生徒数が減少。これを受け、99年には7学年を2クラスから1クラスに減らす苦汁の決断を強いられた。そして今年度は新入生が初めて10人台にまで落ち込むという深刻な状況に陥った。 朝鮮学校に子どもを通わせない同胞があげる理由はさまざまだが、私は彼らから「同胞、同胞社会と関わりたくない」という無言のメッセージを感じている。 例えば朝高を卒業しても子どもを日本学校に通わせる同胞がいるが、彼らが朝高を卒業して子どもが就学期に達するまでは10年以上がたっている。その間、同胞コミュニティーと何の関わりも持たずに日本社会で生活すれば、考え方は変わる。卒業後も彼らが同胞同士気軽に集い、その温かみを感じられたなら、違う結論が導きだされただろう。 チョソンサラムであれば誰もが集える温かい同胞コミュニティーを築くこと、これが朝鮮学校の生徒数を増やす大前提になる。 女性同盟、分会の力 足立では民族教育に関わる問題を解決するため、総聯支部、女性同盟支部、商工会、学校の代表者が民族教育対策委員会をつくり、活動している。対策委では新入生減少の現実を深刻に受け止め、新年度の新入生募集活動を強化した。 ここ数年、就学年齢に達する足立区在住の朝鮮・韓国籍、ダブルの子どもは毎年70〜90人くらいだ。すべての子どもたちが募集の対象となるが、誰がどこに住んでいるかという情報を把握するのは簡単ではない。 対策委では、総聯と付き合いがあったり朝鮮学校に子どもを通わせている同胞だけではなく、すべての同胞を受け入れるという認識のもと、対象者の情報をより多く集めようと奔走した。 ここでは女性同盟支部の役割が大きかった。同胞の家で子どもが生まれたと聞けば訪ねていきアルバムをプレゼントしたり、乳幼児を対象にしたイベントを97年から3年続けて開催した。若いオモニたちのサークルも活発だ。 分会の力も大きかった。足立はすべての分会で世代交替が進み、地域に根差した「近所付き合い」が生きている。学校に対する愛情も引き継がれている。 このように、学校を中心に地域同胞社会が動き出すことで、「子どもが通う保育園に同胞の子どもがいる」などの情報が保護者から寄せられるようになった。また分会委員が自ら発見した対象者を、直接訪ねてくれたこともあった。 障害児教育も 来年度の新入生は35人、今年度の2倍だ。そのうち14人、14家族は、朝鮮学校に初めて子どもを入学させる家庭だ。私が担当した4家族のうち、2組は国際結婚、1組はニューカマーだ。ニューカマーの父母は、数年前から子どもが本校に通っている同じニューカマーのオモニの話を聞いて朝鮮学校を選択した。 ある日本人の母親は当初、「朝鮮語が話せない」と不安を漏らしていた。そこで教員が何度も家に赴いては話を聞き、通知書に漢字を入れたりして対応していると説明したところ、入学を決断。また、日本学校卒業生のある夫婦は、学芸会の際に初めて本校を訪問し、「子どもたちが明るい」と選んでくれた。 「民族」をキーワードにすべての同胞の子どもたちを受け入れるという「民族教育の本来の姿」を追求していけば、生徒数は確実に維持できる。今年は例年に比べ対象者が多かったが、今後も一定の数を維持し、保護者が渇望している1学年2クラスを実現したい。 また、多様化する保護者のニーズに応えることも重要な要素だ。3年前、本校は2人の障害児を受け入れた。きめ細かく対応するため、当時1つだったクラスを2つに分け、障害児が学ぶクラスには補助教員も配置した。 朝鮮学校の生徒数を確保することは、自分の出自を否定する数多くの同胞に民族教育を通じて新しい生き方を提示し、彼らとともに歩んでいく道程だと胸に刻んでいる。 |