社協学術報告会でのシンポジウム
「朝鮮半島昨日、今日、そして明日」
−朝鮮半島情勢論考−
朝鮮経済 「実利」発想の新段階へ 姜氏は、「朝鮮経済の過去10年と経済強国建設の展望―サバイバルから再建、強盛復興へ」と題して発言した。 今年の新年共同社説は昨年、「数年間、苦しい難関を経ていたわれわれの社会主義建設は新たな転換的局面をむかえることになった」と総括しながら、「われわれは、経済強国建設のための攻撃陣地を確固と固め、全面的な攻勢へと進めるようになった」と、その転換の意味を説いた。では昨年の社会主義建設で起きた「転換的局面」、確固と固めた「攻撃陣地」は何を意味するのだろうか。 姜氏は、一昨年と昨年を比較したデータやその表現方法はもちろん、連合企業所の動向に注目した。1999年〜2000年9月に37企業所が解体される一方、その後2001年9月までに65企業所が新たに生まれていることをあげ、00年を機に「苦難の行軍」「強行軍」時期の経済的総括が終わり、新たな段階に入ったと言えるのではないかと推測。「社会主義を守るということは、経済面では人民の共有財産である企業所を守ることにほかならない。生産性の低い企業所は潔く解体してその資材を売ったり他に回して大胆に効率化を図った」と指摘した。 また近年の「実利」強調について、とある工場を閉鎖する際の議論に関する労働新聞の記事を紹介しながら「生産性、コストを計算して国と人民のマイナスになることは潔く中止する。これが実利を図るということのひとつの現れ」だと述べた。 さらにこうした変化は98年、金正日総書記が各地の経済部門を現地指導しながら実利的な発想で転換を切り開いていく方法論を示していった時から始まったとされていると強調。こうした総書記の戦略が00年末から国家的な規模に拡大、定着し始めているようだと指摘した。 そして昨年10月3日、総書記による労作「強盛大国建設の要求に合わせて社会主義経済管理を改善強化することについて」が発表された。それにもとづき現在、朝鮮では「社会主義の原則を確固として守りながらもっとも大きな実利を得られるようにすること」(今年の共同社説)を社会主義経済管理完成の基本方向に定めて主体的な道を進んでいる。 姜氏はこうした流れについて、「人民生活向上、質を追求するためには最新の科学技術と実利精神が必要であり、そのために経済管理問題が改めて提起されたのだとみなしている」と指摘している。 統一・朝米 カギは「わが民族同士」 「北南共同宣言履行の現実と展望」をテーマにした文氏は、キーワードとして「わが民族同士」をあげた。 文氏はまず、「わが民族同士というのはもっとも大切な問題にもかかわらず、長年、もっとも難しい問題でもあった」と指摘。「北と南は国の統一問題を、その主人であるわが民族同士が互いに力を合わせて自主的に解決することにした」(第1項)とうたった一昨年の6.15北南共同宣言が、この難しい問題に解決の道筋をもたらしたと強調した。 また共同宣言第2項の「北と南は、国の統一のための北側の低い段階の連邦制案と、南側の連合制案が互いに共通性があると認定し、今後、この方向で統一を志向することにした」ことによって、「赤化」か「吸収」かという対決に終止符が打たれ、民族大団結への基盤がもたらされたと述べた。 以降、共同宣言履行のための各分野、各レベルにおける北南交流が進んできたものの、米国が障害になって足踏み状態になっているとして、とくにブッシュ新政権の強硬政策が「わが民族同士」による共同宣言履行を大きく阻んでいると指摘した。 文氏は、こうした状況の中で先日開かれた朝鮮政府政党団体合同会議が発表した、@宣言の固守・履行A統一運動活性化B妨害要因の除去――を内容とする「3大アピール」と、@今年を団結と統一促進の年にA6.15を統一の扉を開く日にB5〜8月をわが民族同士が力を合わせていく運動期間に――を内容とする「3大提案」の意義は大きいと強調した。 「ブッシュ政権と朝米関係の行方」と題して発言した徐氏は、ブッシュ政権の対朝鮮強硬政策と朝鮮の現実的かつ原則的立場について述べた。 とくにブッシュが昨年3月7日の金大中との会談で、6.15北南共同宣言の1、2項に対する明確な反対を表明し、南が米の許可なく対北関係を進めることのないよう圧力をかけた事実、また9.11テロ事件後の超強硬発言などに触れた。 一方で朝鮮は、対米関係については00年10月の「朝米共同コミュニケ」から出発する原則的立場を崩しておらず、米国に対して引き続き「テロ国家」リストからの除外、軽水炉建設遅延の補償、ミサイル輸出・開発中止に対する補償、通常兵器の削減と駐南朝鮮米軍の撤収を求めていると指摘。ブッシュが強硬姿勢を崩さない限り事態は引き続き緊張を免れないが、今後、朝米対話が始まるとしたらその糸口は、「朝米共同コミュニケ」の再確認と、「テロ国家」リストからの朝鮮の除外ではないだろうかと推測した。 |