開設4周年迎えた同胞法律・生活センター
同胞の信頼得て実績
弁護士、司法書士などの同胞専門家を中心に、日本人弁護士らの協力も得て同胞たちのさまざまな問題解決に取り組んできた「同胞法律・生活センター」(東京・上野)が昨年12月で開設4周年を迎えた。この間、3000件以上におよぶ相談に誠心誠意対応して同胞に喜ばれ、信頼を得る過程で、その実績により広く日本社会にも認知されつつある。
歴史・政治的背景 1997年12月の開設以来、昨年末までの全相談件数は3181件。事務局によると、一般的に、外国人を支援する各種のボランティア団体などに寄せられる相談は多くて年間300件ほどで、「非常にたくさんの相談が寄せられている」(事務局)とみている。 最も多かったのは相続(364件)で、2番目に金銭貸借(334件)、3番目が離婚(221件)、次が国籍(194件)と在留資格(同)、次いで戸籍(122件)、交通事故(155件)、保険・年金・福祉(118件)の順となっている。 最も多かった相続に関する相談では◇相続人が北南朝鮮に離散していて遺産の分割協議が進まない◇父親が亡くなり戸籍謄本を取り寄せてみたら南に本妻がいた◇かつて南の故郷に妻子をおいて渡日し故郷に帰れないまま日本で家庭を持ち暮らしてきたが、自分が死ぬと相続はどうなるのか◇亡父の南の不動産を、南に自由に往来できる他の兄弟が勝手に処分しようとしているが、なんとか止めさせる方法はないか――というような、かつての植民地支配や国の北南分断といった歴史的背景や政治状況を色濃く反映したものが少なくない。 また金銭貸借に関する相談では同胞同士のトラブルが多く、離婚に関する相談もほとんどが同胞同士の夫婦。日本社会の離婚率上昇は同胞社会にも無縁ではないようだ。近年の特徴も同様で、婚姻期間が2〜3年という夫婦の離婚やいわゆる熟年離婚も目につく。また離婚相談の増加にともない、子どもの姓を母親の姓に変更したいなどの相談も増えている。 結婚観の多様化 国籍に関する相談では、日本人との国際結婚数が増加している状況のもと、日本人との間に出生した子どもの国籍に関する問い合わせが多い。最近では婚姻届を出さないカップルも多く、子どもが生まれた後に認知のみをするケースもある。この場合、民族の国籍を取得することが困難な場合もあり、事務局では、「同胞の結婚観やそのあり方が多様化する中、このような場合に備えた情報の提供や啓蒙・宣伝などの必要性を感じている」という。 戸籍に関する相談では、韓国旅券の申請にともなう戸籍整理に関する相談が多いが、「自分の生きた証」を生まれ故郷である本籍地にきちんと残したいという高齢の1世同胞や、ルーツを探りたいので戸籍を整理したいという若い世代の相談も少なくない。 在留資格に関する相談では、南から来日したニューカマーからの相談が非常に多い。 その他、朝銀の破たんにともない、管財人から催告書が送付されてきたがどう対処したらよいかといった相談が昨年末から増加しているという。センターでは、相談員の勉強会を開くなど対応を強化しており、今後はこの問題専門の相談日を設けることも検討している。 相談者の多くは総聯傘下の同胞や総聯各機関、地域の同胞生活相談綜合センターから紹介を受けた同胞だが、日本国籍を持つ同胞や民団傘下の同胞、南からのニューカマー、中国からの朝鮮族同胞も多い。また日本人弁護士や家庭裁判所、自治体の外国人相談窓口や国際交流協会、キリスト教会などから紹介を受けてくる同胞も少なくない。 万全の相談体制 現在、相談員および協力者の数は30人。月曜日には弁護士、水曜日には行政書士と社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーなどが常時待機し、対応している。相談時間は午後1時半から4時半。 電話、ファクスによる相談は、有資格者が詰めている月、水も含めて月曜日から土曜日までの毎日、午前9時半から午後6時まで受け付けている。専従スタッフが対応し、必要な場合は有資格者に引き継ぐこともできる。さらに随時、電子メールによる相談受付も行っている(氏名、住所、電話番号、メールアドレス明記を)。 またセンターでは昨年8月から月1回、ニュースレターを発行して相談員と総聯の各本部、東京都内の支部(同胞生活相談綜合センター)などに配布している(ファクス・電子メール)。毎月の相談案件についての詳しい事例と分析が紹介されており、大変役立つと好評を博している。支部単位のセンターとは引き続き連携を深めており、支部から寄せられた相談については必ず書面による回答もしくは事後報告をするようにしている。 戸籍謄本の取り寄せ、翻訳、その他裁判関連資料の翻訳などのサービスも有料で行っている。 息の長い活動を 沈植所長(司法書士) わが同胞法律・生活センターは1997年12月1日に設立された。当初から、すぐになくなってしまうような看板だけのセンターではなく、息の長いセンターにしようと努力してきた。 相談員はすべてボランティア。日本人弁護士らも多い。開設から満4年を迎えられたのも、すべて彼らの熱意の賜物だ。相談に訪れた同胞たちもみな本当に喜んでくれている。 最近では家裁や行政当局からの問い合わせも増えている。同胞固有の複雑な問題に対応できるセンターとしての役割を十分に果たしつつあると自負しながら、今後、さらなる発展に努めていきたい。
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