各級朝鮮学校教員教研集会
03年度から新教科書
全国4地域ブロック別に行われた各級朝鮮学校教員の
教育研究集会(1月26日の東日本集会、初級部1年分科)
1月25日から26日にかけて東日本、東海・北信、近畿、中四国・九州の4地域ブロック別に開かれた各級朝鮮学校教員の教育研究(教研)集会では、2003年度から実施される新カリキュラム・教科書を念頭においた研究発表、議論が行われ、東日本集会では教科書編さん委員らによる説明も行われた。改訂の特徴の一部を見る。(社会欄に関連記事)
現場の教員も参加 2003年度実施の新カリキュラム・教科書作りは、1999年10月からスタートした。教育内容をより同胞の志向と日本の実情に合わせようというもので、改訂は同年9月に開かれた総聯中央委員会第18期第3回会議で正式に決定された。 解放直後から50余年、朝鮮学校では自らの手で自主的なカリキュラム、教科書を作成してきた。総聯傘下の教科書・学習用図書出版社である学友書房の教科書編さん部員、朝鮮大学校教員、朝鮮各級学校の教員らが協力し、カリキュラム策定と教科書編さん作業を行う。改訂はほぼ10年ごとに行われてきたが、現行のカリキュラム・教科書は、93〜95年度にかけて大幅にリニューアルされたものだ。 今回の改訂方針は97年末に公表された。98年1月の中央教研大会ではその方針を受け、現行カリキュラムの総括作業が行われた。そして現場での意見収集などを経て99年10月30日、上記のメンバーらによる教科書編さん委員会が新たに発足し、各教科別に本格的な議論がスタートした。 週5日制導入 今回の改訂の目標は、同胞の信頼と支持をもっと得られる民族教育に発展させること。世界各国で進む教育改革、2002年度から日本学校で実施される「完全学校週5日制」との兼ね合いも念頭におかれている。朝鮮学校でも新カリキュラム実施と同時に週5日制が導入されるが、日本の学校とは違い土曜を休みにするのは月1回もしくは隔週で、それ以外の土曜日は課外活動に回す。 2002年度から教科内容を3割削減した日本学校では学力低下が心配されているが、朝鮮学校ではそんなことがないように、今回のカリキュラム・教科書改訂でも現行カリキュラム同様、到達目標を文部科学省の学習指導要領より高く設定している。 改訂の最大のポイントは民族性育成。子どもたちが3、4世となる中で、在日同胞にとって人間の尊厳と関わる民族性の問題はより重要となるからだ。それは国際化の流れの中でむしろ必要とされている。 大型化・カラー化 そのためにとくに力が注がれたのが国語と社会だ。初、中、高国語教科書改訂の基本方向は@朝鮮語を正確に教えることを中心に、子どもたちの年齢・心理的特徴に合う教材を選ぶA口語教育(聞くことと話すこと)を基本に国語教育を改善B同胞たちの志向とニーズを反映し、日本の実情と子どもたちの実情に即して朝鮮語教育を強化する方向で改善C全般的に現行教科書の長所を生かしながら@ABに合わない教材は改善――するというものだ。 具体的には「聞くこと―話すこと」の比重を高め、初級部では会話教材を中心にした。中高級部でも「聞き、話す」という機能面を育むための例えば「紹介」「電話」「案内」(中1)、「報告」「説明」(中2)、「主張」「討論」(中3)、「効果的なコミュニケーションのためのリスニング」「同スピーキング」「同話し方」(高1、2)、「聞く力を育てる」「説得するための話し方」(高3)などの項目を盛り込んだ。 またすべての教材をそれぞれ「リスニング・スピーキング教材」「リーディング教材」「ライティング教材」と分け、項目別に何を教えるかの中心を明確にした。 ほかにも単語の説明やポイント説明、大型化・カラー化(初級部)など、教科書に工夫が凝らされる。 さらに社会科は世界と自分を知る内容、とくに在日同胞の過去、現在を知り、未来を考えさせる内容に大きく変わる。 初級部4年生で扱う環境問題、情報化社会の問題をこれまでより幅広く、深い内容にした。また5年生で、南朝鮮の問題と北南交流問題を初めて取り扱う。6年生では現行教科書で別々に扱っていた「文化」の部分と「国際問題」をひとつにして、世界文化のグローバル化に対応した教え方に変えた。また在日同胞の存在理由と現状、在留資格・教育・職業問題など権利と生活について具体的に教える。 地理を扱う中1社会にやはり南朝鮮の問題が加わる。歴史を扱う中2社会では現代世界の部分を拡充し、「現代世界と民族、世界海外同胞問題」という内容を新たに設けた。政治、経済、文化を扱う中3社会ではより生活に密着した分かりやすい内容に変え、在日同胞社会に対する内容が加えられた。 |