くらしの周辺

試練を乗り越えて


 激動の2001年が暮れ、年が明けた。

 「9.11事件」に端を発する世界的な反動の波は年を越えてわが同胞社会にも深刻な影響を与えつづけている。日本当局のわが組織に対する政治弾圧はゆうに危険水域を越えたものと思われる。

 もう8年も前の話になるが、私が宮城県仙台市にある東北朝鮮初中高級学校で教鞭をとっていたころのことである。

 大阪の総聯本部が府警の急襲をうけ、強制捜査されるというとんでもない事件が起こった。大阪の同胞たちは一丸となり、府警の暴挙に対して激しい闘争を展開した。

 そんな折、ある学父母から家に至急来てくれと電話があり、早々に出向いた。

 こたつを挟んで向かい合い、世間話がとぎれるとおもむろに彼が封筒を取り出し差し出した。お金が入っていた。彼は私に「先生、これで学生たちを大阪に連れて行ってくれんか。息子たちに同胞の歴史的な闘いを見せてやりたい」。瞬間、同胞の燃えるような組織愛と、教育の原点に触れた気がした。

 親が子に、先輩が後輩に、先に生きた者が後に生きる者に生き方を教えるという教育の原点を。

 現地滞在3時間、バス往復30時間の仙台―大阪府警特別ツアーを学生たちは生涯忘れることがないだろう。

 あれから8年、われわれはより大きな、そして厳しい試練に直面している。しかしこれはわれわれを鋼鉄のように鍛え上げる試練であると確信している。(崔権一・教員)

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