WBC世界スーパーフライ級戦
苦しい闘い、でも同胞に力
2年ぶり、地元大阪で勝利、V6果たした洪昌守
「本当に強かった。何度もあきらめかけたけど、なんとか勝つことができた。これもみんなの応援のおかげです!」―。20日、大阪城ホールで行われたWBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ(12回戦)でチャンピオンの洪昌守選手(金沢ジム)が同級1位のジェリー・ペニャロサ選手(フィリピン)を2―1の判定で下し、見事V6を達成した。洪選手が両手を挙げると場内には「ホンチャンス」コールが響きわたった。洪選手はその声援に何度も手を振って応えていた。(金明c記者)
指名挑戦者ペニャロサとは9月以来の再戦となった。 序盤、バッティングで減点され強烈な左ストレートを浴びるなど、劣勢を強いられた。中盤から反撃に出て10ラウンドの徹底したボディー攻撃で、なんとか流れを引き寄せた。 1年3カ月前、小差の3―0でペニャロサを破った試合よりも苦しい試合となった。フットワークはさえず左も出ない。8月のロペス戦で痛めた左拳は「完治した」との言葉とは逆に治っておらず、体調も万全ではなかった。 「試合中は俺、本当にチャンピオンなのかなと思った」。控え室でそう話した洪選手の顔は傷だらけだった。10ラウンドになってようやくボディーに活路を見いだした。「あれがなかったら、ずるずるいっていた」と苦笑いを浮かべる。 最後の最後まで持ち前の気迫と地元同胞応援団の声援に支えられ、苦しい中なんとか勝利をものにした。 2年ぶりに行われた地元大阪での試合には、多くの同胞応援団が駆けつけ最後まで声援を送り続けた。プロボクサーになるために、東京朝高卒業後、単身で向かった大阪。洪選手にとっては第2の「地元」でもある。
1万6000人を収容できる会場には、「百戦百勝、洪昌守!」「道険笑歩」「朝鮮の虎、洪昌守」などの横断幕が掲げられた。 約500人の同胞応援団はメガホンを持ち、統一旗を振りかざしながら「イギョラ、イギョラ、ホンチャンス!」を叫び続けた。 洪選手と同じ東成支部の金泰碩さん(22)は「これまで応援には欠かさず駆けつけている。今回は本当にハラハラした試合だったけど、必ず勝つと思っていた」とホッとした表情だった。 農楽の衣装を着て声援を送った東淀川支部で専従活動する金是慶さん(23)。「ヒヤヒヤして気が気じゃなかった。でも結果がすべて。とにかく、会場の雰囲気を盛り上げるのに必死でした。洪選手はいつも同胞たちに力を与えてくれる」。 「本当に強い。かっこよかった」と話すのは、同級生同士で会場に駆けつけた、李蘭姫さん(24)と金慶淑さん(24)。 「とにかく洪選手は、在日同胞の希望の星。これからもチャンピオンでいてほしい」(金慶淑さん) 大阪学生会のメンバーも約20人が会場に集まり応援した。試合前には寒い中、みんなで農楽隊となり会場を盛り上げた。試合中もひたすら大声を張り上げ、応援団の中でもひときわ目立つ存在だった。 前期会長を務めた全小百合さん(18)は、会場での応援は初体験だ。 「洪選手の試合は在日同胞にパワーを与えてくれる。がんばって勝ってくれたからもっともっと応援していきたい。洪選手のように『民族』というものをさらに大事にしていこうと思った」と笑顔で話す。 同じく学生会の文晴美さん(17)も興奮気味に、「とにかく感動の一言です。初めて会場にきたけど、自然と声がでるのが不思議だった。やっぱり朝鮮人の血が騒ぐ自分がいることを実感した」と語った。 |