朝鮮学校児童・生徒への嫌がらせ許せない

日弁連、異例の緊急アピール、日本政府に防止策求める


 日本弁護士連合会(本林徹会長)は19日、朝・日首脳会談(9.17)で日本人拉致事件が明らかになって以降、各地で続発している朝鮮学校児童・生徒に対する暴言、暴力、嫌がらせを受け、緊急アピールと声明を発表した。日弁連が緊急アピールを出すのは異例のことで事態の深刻さから判断したものだ。

調査した事件について説明する日弁連のメンバーら

 日弁連の松倉佳紀副会長、人権擁護委員会の村越進委員長、市川正司副委員長が東京・霞ヶ関の弁護士会館で記者会見し発表した。

緊急アピールの内容

 北朝鮮が日本人拉致を認めて以来、朝鮮学校に通う子どもたちに対する嫌がらせが続発しています。
 しかし、在日コリアンの子ども達には、拉致について何の責任もないことは明らかです。
 憲法と国際人権法は、人間の尊厳を保障し、人種差別を禁止しています。
 在日コリアンの子ども達には、差別を受けることなく安心して生活し通学して勉強する権利があります。嫌がらせはそうした権利を侵害するものであり、決して許されません。
 日本弁護士連合会は、人権の擁護を使命とする法律家の団体として、わが国のすべての人々に対し、
 1、 在日コリアンの子ども達に対する嫌がらせや脅迫的言動を決して行わないよう、
 2、 国籍や民族が異なっても、一人ひとりがお互いの人権を尊重し共生できる社会をつくるよう、強く訴えます。
        2002年12月19日
    日本弁護士連合会 会長
           本林 徹

 村越進委員長は、「子どもたちへの迫害が続く日本社会は異常だ。排外主義的な動きは有事法制制定の動きとも連動している」と警鐘を鳴らし、松倉副会長は、「嫌がらせは在日コリアンに不安と恐怖を生み出しており、早急な対策を講じることが必要だ」としながら日本政府に防止策を求めた。

 日弁連としての対応は「在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせを許さない若手弁護士の会」(代表=杉尾健太郎弁護士)が求めていた。今年10月に弁護士登録した20、30代のメンバーらは、11月上旬から埼玉、西東京第1、千葉の各朝鮮初中級学校を訪れ調査、8件を確認した。

 事務局長の濱野泰嘉弁護士(29)は、「ニューヨークやシアトルから反響や寄付の申し出があった。今までおかしいと思っていながらも発言できなかった人に声を出してほしい。その声が大きくなればコリアンの子どもたちも何かあった時に日本人を頼りにし、安心して学校に通えるはずだ」と期待を寄せる。代表の杉尾健太郎弁護士(38)も、「弁護士としてまずは事実を確認すべきだと思った。今後は東京韓国学校や日本学校に通う子どもたちの調査もしたい」と意欲を見せる。

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 「若手弁護士の会」連絡先=TOKYO大樹法律事務所 濱野泰嘉 〒160―0004 東京都新宿区四谷4―3 ケイアイ四谷ビル2F TEL 03・3354・9680、FAX 03・3354・3324、Eメール=hamano@tokyotaiju.com

名古屋弁護士会も「人権侵害」

 名古屋弁護士会の成田清会長も18日、声明を発表し、嫌がらせを厳しく非難した。同弁護士会の人権擁護委員会委員の聞き取りによると、愛知県下でも生徒が下校時に通行人から聞くに耐えない暴言を受けた、屈辱的な言葉を叫びながら近寄られたので近くの店に入って逃げた、学校から駅まで後をつけられた、などの事件が判明している。

 声明は「拉致事件に責任のない朝鮮学校の生徒たちに対する嫌がらせは許されない人権侵害行為」だと断じながら、拉致事件の責任を追及することと、朝鮮学校生徒たちに対して個人的に報復や嫌がらせをすることを峻別する冷静さを持つことが求められている、と訴えた。【愛知支局】

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