取材ノート

南朝鮮大統領選、僅差から見えるもの


 南朝鮮大統領選挙投票日の19日、午後9時半過ぎに知り合いからの一報で盧武鉉氏の当選確実を知った。その時、10月下旬、取材でソウルなど各地を訪れた際に出会った人たちの事が頭をよぎった。

 元来が保守的な土地柄だといわれる江原道。ところが6.15共同宣言に基づく北南協力・和解事業が唯一、道を上げて取り組まれていた。知事、そして道・郡など地方議会も圧倒的にハンナラ党が占めている。そのハンナラ党は6.15宣言を徹底的に批判してきた。なのに、党員たちまでもが事業に加わっていた。

 彼らはこう語る。「同じ同胞が手を取り合い助け合う―。ここに政治を介入させてはならない」「統一のためには民族内部の意思疎通が不可欠だ。政治が介入すると、別次元のものになってしまう」。

 各マスコミとの交流過程で、統一問題担当のある記者は、「6.15宣言後の南の社会は反共と和解が混在している」と指摘した。

 それは、臨津閣の展示館を見学した時によく理解できた。冷戦・対決時代の「北敵視」の資料、展示物と対になって、6.15宣言後の「統一・和解」に向けた資料・展示物が陳列されていたからだ。

 また、マスコミ事情に詳しいある関係者は、「6.15宣言に批判的な朝(朝鮮日報)・中(中央日報)・東(東亜日報)VS大韓毎日・ハンギョレ・文化日報」という図式、さらに「各社とも、6.15を支持する386世代(4、5年前に南で語られたもので、当時60年代生まれで30代、80年代に大学に在学した世代)VSそれ以上の既成世代」という内情を抱えていると語った。

 今回、与野両候補の得票率は前回選挙同様、ほぼ半分。僅差だった。今の南の現状を踏まえて、この僅差からどのようなメッセージを受け取るべきなのか。

 年末にもたらされた一報に、さまざまな思いを巡らせている。(彦)

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