親の気持ちに近づくこと
神奈川同胞結婚相談所(有)メアリの現場から
1996年3月1日の設立から7年近くが過ぎた。 尹旗東所長が設立当初からこだわったのが、徹底して「民営化」することだった。 同胞同士の結婚を望んで相談を寄せるのは、総聯系の同胞よりもむしろ民団系や未組織の人が多いと思ったからだ。結婚というプライベートな問題を扱うことから、不特定多数の人々が多数行き来する場所も避けるべきだと考えた。 メアリ(こだま)という名称には、「喜びの声が神奈川中に響きわたれ」との願いが込められている。いくつか候補をあげ、複数の意見を参考に選んだ。「英語で結婚することをマリーというでしょ。語呂もいいと思って」と尹所長。字体はデザイナーに頼み、看板や名刺、広告に統一したロゴを刷り込んだ。
電話番号も「ムコイチバン(651) ヨイフーフ(4122)」を、数百ある番号の中から探し出した。「民族結婚」に理解のある同胞の協力を得て、現在の場所に事務所を構えた。 所内のレイアウトも専門家に頼み、相談コーナー、お見合いコーナーなどを設けた。「最近ではホテルでやることが多いが、設立当初はここでお見合いをすることもありました」(尹所長)。 地元の神奈川新聞に広告を出すなど宣伝も活発に展開してきた。 メアリでは、すべての活動において数年間蓄積された経験をもとにシステム化をはかっている。 例えば、電話の応対。結婚問題を相談するのには勇気がいる。にもかかわらず、電話をした際に留守電だったら、二度とかけてこないかもしれない。「そういうことが決してないよう、必ず誰かが所内にいて電話に出る態勢を整えている」とカウンセラーの金淑姫さんは話す。 マッチングの際にも、コンピューターがはじき出したデータを送るかどうかを、まず相手に問い合わせる。関心があれば送るが、なければ送らない。送った後には相手の返事を待つのではなく、こちらから確認の電話をかける。 お見合いの返事も3日以内にもらう。見合いをした次の日には必ず電話を入れる。「そうした細かいケアに神経を使う」(金さん)。 最も重視しているのは秘密を徹底して守ること。結婚問題はプライバシーに関わる問題だけに、秘密は厳守されなければならない。それでこそ、会員も安心して相談できるというものだ。 当然と言えば当然だが、プロとしての自覚があってこそできること。「会員様との信頼関係を最も大切にしている」。 そして、メアリがもう一つ大切にしていることがある。「親の気持ちに近づくこと」だ。自分の息子、娘を結婚させる心情で決して事務的にならないよう心がけている。 システム化に基づいたプロの仕事、そこに肉親のような「情」がプラスされることで、ますます需要が高まっている。 「今年は口コミでいらしてくれるお客様が目立ちました」とカウンセラーの金さん。7年目を迎え軌道に乗ってきたことを実感しているようだ。 来年からは3カ年計画を立て、設立10年目を迎える2005年には、名実ともにブライダル関連の収入だけですべてを維持できるようがんばっていく決意でいる。 |