春・夏・秋・冬

 「私たちのように突然の暴力で家族を失うような悲しみを、もう誰にも味あわせたくない。大統領は私たちの嘆きを、戦争を正当化するために使わないで」。こう訴えたのは9.11テロで肉親を失った遺族たち。彼らは「ピースフル・トゥモローズ」という平和グループを立ち上げ、全米にアフガン攻撃の大合唱が響き渡る中、冒頭のように訴えた

▼「ピース…」は今年、平和と人権のために貢献したとしてロス最大の人権擁護団体から表彰もされている。これらの動きや、10月にワシントンやサンフランシスコで大規模に行われたイラク戦争反対集会の模様は、月刊誌「世界」1月号に詳しい

▼イラクに対する国連の査察が行われる中、ブッシュ米政権はイラク攻撃の準備を着々と進めているようだ。それにつれ、米国内での反戦運動もベトナム戦争以来の盛り上がりを見せている

▼「戦争は時に必要悪かもしれないが、常に悪であり、決して善行ではない」。こう強調したのは、今年のノーベル平和賞を受賞したカーター元米大統領だ。米国内からこうした声が挙がっているのに、それでもブッシュ政権は戦争を始めるつもりだろうか

▼とくに、テロ犠牲者遺族の姿勢から、多くを学ぶべきだ。報復は報復しか生まない。それを十分に知っているからこそ、彼らは憎しみや悲しみを乗り越え平和を訴える。彼らの一部はアフガニスタンへも赴き、米軍の空爆で家族を失った遺族たちと交流したという

▼カーター氏も指摘するように、正義の戦争などあり得ない。ブッシュ政権は、この言葉を肝に銘ずるべきだ。(聖)

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