「1世の体験残そう」

茨城・証言収集総括の集い


集いに参加した1世と委員会のメンバー

証言集を手渡される1世

 11月30日に行われた「茨城県在日同胞証言収集総括の集い」。

 集いには、証言収集に協力した1世たちと、証言の収集・整理に携わった「県在日同胞証言収集委員会」のメンバーらが参加した。

 同委員会は在日1世の体験を歴史に残そうと、総聯茨城県本部が中心となり、郷土史研究家や弁護士などで結成されたもので、ホットラインを開設するなど地道な活動を行ってきた。

 集いではこの間の調査事業報告が行われた。茨城県内には強制連行があったと思われる場所が51カ所あり、そのうち13カ所で強制連行があったことをつきとめたことが明らかにされた。

 また、強制連行、強制労働に関する研究を行っている東海村村議会議員の相沢一正氏が講演した。

 相沢氏は、各地の歴史を掘り起こしていくうちに炭鉱や鉱山に関する歴史資料があまりなかったことから、戦時下における強制連行問題に取り組み始めたと述べた。

 調査活動の過程では、日立鉱山の本山採鉱所で強制連行を強いられた「江戸一郎」なる在日同胞の証言が一番印象に残っていると述べ、県内での強制連行について具体的な統計を示しながら話した。

 相沢氏は、茨城では統計上はないものの、1909年頃には多くの朝鮮人労働者がいたことが地元新聞の記事で明らかになっているとしながら、他の地域同様、県内の強制連行も「募集」「官斡旋」「徴用」の3段階で行われていると述べた。また、日立鉱山の従業員の証言により、会社が「朝鮮総督府」に必要人員数を申請し、許可が下り次第朝鮮に渡り警察力を駆使して労働力をかき集めたことが明らかになっていると語った。そのうえで、「『募集』とは名ばかりで、すでにその頃から強制連行の様相を呈していたことがわかる」と話した。

 相沢氏は、強制連行こそ植民地収奪の典型的なパターンであるとしながら、日本政府は人道上許されないこうした行為について、きちんと謝罪すべきだと指摘した。また、歴史的事実を記憶として後世に正確に伝えるのが大切だとしながら、こうした積み重ねがあってこそ、真の日朝友好関係が築かれると話した。

 集会では、証言者である10人の1世一人ひとりに証言集が手渡された。

 強制連行体験者である李庸燮氏(74)は、「この証言集には1世の血と涙、悲しみが染みこんでいる。今日この場に参加して、苦労に苦労を重ねてきた1世が今も民族のために働いているのを見られてうれしい。今後もお互いがんばっていこう」と語る。

 「集いに参加してそれでも気持ちがおさまったが、最近のマスコミ報道を見ていると悔しくて眠ることもできない。この状況を打開するには、総聯、民団関係なしに団結して民族性を守っていくしかない。『もう年だから』などと言わず、子どもや孫のためにがんばろう」。夫を追って日本に渡ってきた呉在葉氏(78)もこう感想を話していた。

 同委員会では、今回集めた証言を茨城新聞で連載できるよう働きかけるとともに、来年6月に刊行予定の「朝鮮人強制連行調査の記録・関東編2」にも掲載する予定だ。(李松鶴記者)

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