開城工業地区法


 朝鮮最高人民会議常任委員会が、11月20日に採択した開城工業地区法の全文はつぎのとおり。

 第1章 開城工業地区法の基本

 第1条 開城工業地区は、共和国の法によって管理、運営する国際的な工業、貿易、商業、金融、観光地域である。
 朝鮮民主主義人民共和国開城工業地区法は、工業地区の開発と管理・運営における制度と秩序を厳格に確立し、民族経済を発展させることに寄与する。

 第2条 工業地区の開発は、地区の土地を開発業者が賃借して敷地の整理とインフラを建設し、投資を誘致する方法で行う。
 工業地区は工場区域、商業区域、生活区域、観光区域などに分ける。

 第3条 工業地区には、南側および海外の同胞、外国の法人、個人、経済組織が投資できる。
 投資家は、工業地区に企業を創設したり、支社、営業所、事務所などを設け、経済活動を自由に行える。
 工業地区では、労働力の採用、土地の利用、税金の納付などの分野で特恵的な経済活動条件を保障する。

 第4条 工業地区では、社会の安全と民族経済の健全な発展、住民の健康と環境保護を阻害したり、経済技術的に立ち遅れた部門の投資と営業活動はできない。
 インフラ建設部門、軽工業部門、先端科学技術部門の投資は特別に奨励する。

 第5条 工業地区の活動に対する統一的指導は、中央工業地区指導機関が行う。
 中央工業地区指導機関は、工業地区管理機関を通じて工業地区の活動を指導する。

 第6条 機関、企業所、団体は、工業地区の活動に関与できない。
 必要に応じて工業地区の活動に関与しようとする場合、中央工業地区指導機関と合意しなければならない。

 第7条 工業地区では、投資家の権利と利益を保護し、投資財産に対する相続権を保障する。
 投資家の財産は国有化しない。社会共同の利益に関連してやむを得ず投資家の財産を接収しようとする場合、投資家と事前協議し、その価値を補償する。

 第8条 法に基づかずして南側および海外の同胞、外国人を拘束、逮捕したり、身体や住宅を捜索しない。
 身辺安全および刑事事件に関連し、北南間の合意、または共和国と外国間に結ばれた条約がある場合はそれに従う。

 第9条 工業地区での経済活動は、本法とその施行のための規定に従って行う。
 法規に定めていない事項は、中央工業地区指導機関と工業地区管理機関が協議して処理する。

 第2章 開城工業地区の開発

 第10条 工業地区の開発は、定められた開発業者が行う。
 開発業者を定めるのは、中央工業地区指導機関が行う。

 第11条 開発業者は、中央工業地区指導機関と土地の賃貸借契約を結ばなければならない。
 中央工業地区指導機関は、土地の賃貸借契約を結んだ開発業者に当該機関が発給した土地利用証を与えなければならない。

 第12条 工業地区の土地の賃貸期間は、土地利用証を発給した日から50年とする。
 土地の賃貸期間が終わった後も、企業の申請によって賃借した土地を利用し続けることができる。

 第13条 開発業者は、工業地区開発総計画を正確に作成して中央工業地区指導機関に提出しなければならない。
 中央工業地区指導機関は、工業地区開発総計画を受け付けた日から30日以内に審議結果を開発業者に知らせなければならない。

 第14条 工業地区の開発は、認可された工業地区開発総計画に従って行う。
 工業地区開発総計画を変更させようとする場合、中央工業地区指導機関に申請書を提出して認可を受ける。

 第15条 中央工業地区指導機関は、開発工事に支障をきたさないように建物と付属物を適時に撤去、移設し、住民を移住させなければならない。
 開発区域内の建物、付属物の撤去と移設、住民移住にかかる費用は、開発業者が負担する。

 第16条 開発業者は、開発区域内の建物と付属物の撤去が終わり次第、開発工事に着手しなければならない。
 工業地区開発は、段階別に分けて行うことができる。

 第17条 工業地区のインフラ建設は開発業者が行う。
 開発業者は、必要に応じて電力、通信、用水保障施設のようなインフラ対象を他の投資家と共同で建設したり、譲渡、委託の方法で建設することもできる。

 第18条 開発業者は、インフラ重要建設が終わり次第、工業地区開発総計画に従って投資企業を配置しなければならない。この場合、工業地区の土地利用権と建物を企業に譲渡したり再賃貸することができる。

 第19条 開発業者は、工業地区で住宅建設業、観光娯楽業、広告業のような営業活動を行うことができる。

 第20条 中央工業地区指導機関と当該機関は、工業地区開発に支障をきたさないよう人員の出入りと物資の搬出入条件を保障しなければならない。

 第3章 開城工業地区の管理

 第21条 工業地区の管理は中央工業地区指導機関のもと、工業地区管理機関が行う。
 工業地区管理機関は、工業地区管理・運営活動の状況を四半期別に中央工業地区指導機関に報告しなければならない。

 第22条 中央工業地区指導機関の任務は次のとおり。
 1、開発業者の指定
 2、工業地区管理機関に対する指導
 3、工業地区開発事業に対する指導
 4、重要建設設計文書の合意
 5、工業地区法規の施行細則の作成
 6、企業が要求する労働力、用水、物資の保障
 7、工業地区で生産された製品の北側地域への販売の実現
 8、工業地区の税務管理
 9、このほかに国家から委任された事業

 第23条 中央工業地区指導機関は、工業地区の管理・運営に関連して提起される問題を当該機関と定期的に協議しなければならない。
 当該機関は、中央工業地区指導機関の活動に積極的に協力しなければならない。

 第24条 工業地区管理機関は、開発業者が推薦するメンバーで構成する。
 中央工業地区指導機関が推薦するメンバーも工業地区管理機関のメンバーになれる。

 第25条 工業地区管理機関の任務は次のとおり。
 1、投資条件の造成と投資の誘致
 2、企業の創設許可、登録、営業許可
 3、建設許可と竣工検査
 4、土地利用権、建物、運輸機材の登録
 5、企業の経営活動への支援
 6、インフラ施設の管理
 7、工業地区の環境保護、消防対策
 8、南側地域から工業地区に出入りする人員と輸送手段の出入り証明書の発給
 9、工業地区管理機関の活動準則作成
 10、このほかに中央工業指導機関が委任する事業

 第26条 工業地区管理機関の責任者は理事長である。
 理事長は、工業地区管理機関の活動全般を手配し、指導する。

 第27条 工業地区管理機関は運営資金を持つ。
 運営資金は、手数料などの収益で充当する。

 第28条 南側地域から工業地区に出入りする南側および海外の同胞、外国人と輸送手段は、工業地区管理機関が発給した出入証明書を所持し、指定されたルートを通じてビザなしに出入りできる。
 共和国の他の地域から工業地区に出入りする秩序、工業地区から共和国の他の地域に出入りする秩序は別途定める。

 第29条 工業地区で南側および海外の同胞、外国人は、文化、保健医療、スポーツ、教育分野の生活上の便宜が保障され、郵便、電話、ファクスのような通信手段を自由に利用できる。

 第30条 工業地区に出入り、滞在、居住する南側および海外の同胞、外国人は、定められた開城市の革命史蹟地と歴史遺跡・遺物、景勝地、天然記念物などを観光することができる。
 開城市人民委員会は、開城市の観光対象と施設を整え、保存、管理し、必要なサービスを提供しなければならない。

 第31条 工業地区で広告は、場所、種類、内容、方法、期間などを制限されずに行うことができる。
 しかし、屋外に広告物を設置しようとする場合は、工業地区管理機関の許可を受ける。

 第32条 工業地区での物資の搬出入は申告制にする。
 物資を搬出入しようとする者は、搬出入申告書を正確に作成し、物資出入地点の税関に提出しなければならない。

 第33条 工業地区に搬入したり、工業地区から南側、または他国に搬出する物資と共和国の機関、企業所、団体に委託加工する物資に対しては関税を賦課しない。
 他国から搬入した物資をそのまま共和国の他の地域に販売する場合は、関税を賦課することができる。

 第34条 検査、検疫機関は、工業地区の出入り検査、税関検査、衛生・動植物検疫活動を工業地区の安全と投資の誘致に支障をきたさないよう科学的・技術的方法で迅速に行わなければならない。

 第4章 開城工業地区の企業創設、運営

 第35条 投資家は、工業地区に企業を創設しようとする場合工業地区管理機関に企業創設申請書を提出しなければならない。
 工業地区管理機関は、企業創設申請書を受け付けた日から10日以内に企業創設を認可したり、否決する決定を行い、その結果を申請者に知らせなければならない。

 第36条 企業創設の認可を受けた投資家は、定められた出資を行い工業地区管理機関に企業登録をした後、20日以内に当該機関に税関登録、税務登録をしなければならない。この場合、定められた文書を提出しなければならない。

 第37条 企業は、従業員を共和国の労働力で採用しなければならない。
 管理人員と特殊な職種の技術者、技能工は工業地区管理機関を通じて中央工業地区指導機関と協議し、南側、または外国の労働力で採用することができる。

 第38条 企業は、認可を受けた業種範囲内で経営活動を行わなければならない。
 業種を増やしたり、変更しようとする場合は、工業地区管理機関の認可を受けなければならない。

 第39条 企業は、工業地区外の共和国領域で経営活動に必要な物資を購入したり、生産した製品を共和国の領域に販売することができる。
 必要に応じて、共和国の機関、企業所、団体に原料、資材、部品の加工を委託することもできる。

 第40条 工業地区での商品の価格とサービス料金、企業と共和国の機関、企業所、団体の間に取り引きされる商品の価格は、国際市場価格に準じて当事者が合意して定める。

 第41条 工業地区での流通貨幣は転換性外貨にし、クレジットカードなどを用いることができる。
 流通貨幣の種類と基準貨幣は、工業地区管理機関が中央工業地区指導機関と合意して定める。

 第42条 企業は、工業地区に設立された銀行に口座を設けなければならない。
 工業地区管理機関に申告し、工業地区外の南側、または外国の銀行にも口座を設けることができる。

 第43条 企業は、会計業務を正確に行い、企業所所得、取引税、営業税、地方税などの税金を適時に納付しなければならない。
 工業地区での企業所得税率は、決算利潤の14%にし、インフラ建設と軽工業、先端科学技術の部門は10%にする。

 第44条 工業地区では外貨を自由に搬出入することができる。
 経営活動での利潤とその他の所得金は、南側の地域、または外国に非課税で送金したり、持ち出すことができる。

 第45条 工業地区に支社、営業所、事務所などを設置しようとする場合は、工業地区管理機関に当該の申請をし、認可を受ける。
 支社、営業所は、工業地区管理機関に登録してこそ営業活動ができる。

 第5章 紛争の解決

 第46条 工業地区の開発と管理運営、企業活動に関連する意見の相違は、当事者間で協議の方法によって解決する。
 協議の方法で解決できない場合は、北南間に合意した商事紛争解決の手続き、または仲裁、裁判の手続きによって解決する。

 付則

 第1条 本法は、採択された日から実施する。

 第2条 開城工業地区に関連して北南間で結ばれた合意書の内容は、本法と同じ効力を持つ。

 第3条 本法の解釈は、最高人民会議常任委員会が行う。(朝鮮通信)

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