2002年度朝鮮料理(焼肉)店経営集中講座(第2回講座)

実践的内容を提供


 2002年度朝鮮料理(焼肉)店経営集中講座の第2回講座が11月19、20の両日にかけて、東京・上野の朝鮮商工会館と新宿の叙々苑游玄亭新宿店で行われた。「繁盛店づくりの秘訣はホールと調理場にあり」をメインテーマに行われた第2回講座は、10月の第1回講座同様およそ50人の関係者らが参加した。今講座では、講演のほかに料理講習やメニュー研究など、より実践的なものが多く、参加者には好評だった。
(李松鶴記者)

講演から

消費者トレンドを知る-押野見喜八郎氏(FSプランニング代表)

 押野見氏は、最近の外食業界では客と業界の双方に変化が起きていると述べた。まず客層の主力が団塊世代から25〜35歳の独身者に移ったことをあげた。焼肉業界の変化としては、成熟期を迎えたことで多様化、細分化が求められていることを指摘した。

 長引くデフレ不況下で消費者の動向は着実に変わりつつあることに触れながら押野見氏は、消費者が肉を食べなくなったのではなく、どう食べるかにこだわっているのが最近の傾向だと述べた。

 こうした状況で何よりも大切なのは、消費者トレンドを知ることだとしながら、そのためには@情報化時代の食トレンドA生理的五感から心理的五感へのレベルアップBD・E・L・I・G・H・Tをキーワードにする―ことがポイントだと話した。

 「情報とは商品の情報価値のことで、いかに興味深い情報を提供するか、お店側からどのような情報発信をするかが大切。心理的五感とは、味だけでなく見た目など、客の気持ちを楽しませるメニュー作りを心がけるということなんです。そして、メニュー開発ではダイエット(D)、エコノミカル(E)、ライト(L)、インテリジェント(I)、グルメ志向(G)、ヘルシー(H)、テイスティ(T)を追求することがポイントになります」

 そのうえで、メニュー開発を見直すことが肝要であるとしながら、メニュー開発の目的と課題について述べた。

 メニュー開発の目的について氏は、@陳腐化防止とリフレッシュメントA客単価向上Bウィークポイントの強化C処理能力の改善D原価の改善―などをあげながら、肝心なのは「何を売るかよりどう売るか」であり、ヒットメニュー作りのキーワードについて語った。
 最後に、メニューの切り口で基本の10項目について話しながら、客のために努力をすれば、客が自然と儲けさせてくれると締めくくった。

朝鮮料理は科学的薬膳料理-韓啓司氏(恵クリニック院長)

 「朝鮮には先史時代から『神仙術』というものがあり、この思想、智恵が朝鮮人参を発見させたのです」

 「朝鮮料理で人々を魅了する〜健康と医食同源〜」と題して講演した韓啓司氏は、朝鮮料理で使われる代表的な食材である朝鮮人参、ゴマ、ニンニクなどが、健康を維持するうえでいかにいいものであるかについて話した。

 韓氏によると、朝鮮人参の主成分はサポニンで、副腎ホルモンの分泌促進や生体調整作用、抗動脈硬化作用、抗がん作用などがある。また、ニンニクは風邪や気管支炎、腹痛、動脈硬化、高血圧、疲労回復などに効果があり、ゴマにはコレステロールを低下させるリノール酸や抗酸化作用のあるセサモールが多く含まれているという。

 食材の成分や効能について具体的に述べながら韓氏は、「朝鮮料理はいわば科学的な薬膳料理」であることを強調した。

 朝鮮料理の代表的メニューのひとつであるキムチについても、「世界中の漬物の中でアミノ酸が含まれているのはキムチだけで、キムチのポイントは、朝鮮料理の基本のひとつである発酵にあるんです。最近は浅漬けキムチなどが出回っていますが、発酵させなければ効能は10分の1くらいにしかなりません」と話した。

 また、「肉にはやはり唐辛子が合うし、食欲がない時に唐辛子を食べると食欲増進につながります。夏には熱いもの、冬には冷たいものを食べることで身体の免疫力を高めることができ、健康を維持できるのです」と述べながら、21世紀は健康管理にさらに関心が注がれ、朝鮮料理は健康管理にはうってつけの料理であると指摘した。

 そのうえで、朝鮮料理に携わっていることへのプライドを持ち、朝鮮料理のさらなる普及と発展に尽力してくれることを参加者らに訴えた。

料理講習・メニュー研究

実演で質見直す-出演者の一挙手一投足に注目

「焼肉彩苑モランボン」の゙一男夫婦
「焼肉処こち」の李康浩氏

 今回の講座でもっとも好評だったのは、叙々苑游玄亭新宿店で20日に行われた料理講習と叙々苑メニュー徹底研究だ。

 料理講習に出演したのは、東京・日野市の「焼肉彩苑モランボン」と、岡山・岡山市の「焼肉処こち」。「モランボン」の゙一男氏は夫婦で出演し、モランボンサラダ、ナムル2種類、九折板の計3種類を紹介。一方の「こち」は代表の李康浩氏らが出演し、塩ユッケ、コウネ(ブリスケ)、山カルビをそれぞれ紹介した。

 「企業秘密」は一切なし。目の前で調理するため、参加者らは出演者の一挙手一投足に注目しながら、しきりに質問を投げかける。

 「それは何ですか」「調味料は決まったメーカーのものを使っているんですか」「野菜を戻す時になにかコツはあるんですか」などの質問に対し、出演者はひとつひとつ丁寧に答える。

 野菜メニュー中心の「モランボン」に対し、肉メニュー中心の「こち」は、肉のブロックをさばくところから始めた。そのさばき方は従来のものとはかなり違っており、参加者の注目を集めた。

 李康浩氏は、「焼肉業界にも日本の人たちが大勢進出しているが、やはり焼肉は同胞が守らなければ。厳しいことも少なくないが、5〜10年辛抱してでも、われわれがこの業界を盛り上げていかなくては」と焼肉にかける意気込みを話していた。

料理講習に見入る参加者

 料理講習に続いて行われた食事交流会を兼ねた叙々苑メニュー徹底研究では、次々と出される洗練されたメニューで参加者の目と舌を楽しませながら、朴泰道社長がメニューに対する具体的な説明を行った。

 閉会の辞を述べた同胞飲食協議会の金奉賛氏は、講師陣の実践的かつ具体的なアドバイスや料理講習などによって、内容の濃い有意義なものになったとしながら、朝鮮料理の奥深さと探究心の必要性をあらためて実感したと語った。

 また、「多くを学び、感動し、自分を振り返るいい機会になった」との参加者のアンケートを紹介。経営全般のレベルアップ、朝鮮料理に携わるプライドを持つこと、業界内での親ぼくと交流、ネットワークのさらなる発展を今後の課題として提示した。

 デフレ不況という厳しい状況の中、2回にわたって行われた朝鮮料理(焼肉)店経営集中講座。各地から集まった参加者らは講演や他店の経験を聞くことで、確実に何かをつかんだようだった。回を重ねるごとにそれはより確かなものとなり、この積み重ねが業界全体のレベルアップにつながっていくのだろう。

店舗見学会

見た目の斬新さに注目

深夜にまで及んだ意見交換会

料理、内装などについて活発に意見を交わす

 19日に行われた店舗見学会では、前回同様参加者らが活発に意見を交換した。今回の店舗見学会は、2つのグループに分かれ前回訪ねた六本木の豚肉専門店と、いま巷で話題の丸ビル内の焼肉店で行われた。

 丸ビルの焼肉店を見学した参加者らはまず、35、36階の飲食フロアを見学。

 店舗内に入った参加者らはいくつかのグループに分かれ、従業員の接客、メニュー金額や見た目、味などを細かくチェックしながら、同時に自店での経験談などについていろいろと話し合った。

 商工会館に戻ってから行われた意見交換会では、「『食べられじょうずなサンチュ』などといったネーミングもさることながら、食べやすさと見た目にこだわっているところは勉強になった」(山形・大堀明美さん)、「壁に刻まれたハングルと、社長が同年代だということに勇気を得た」(長野・徐成俊さん)、「朝鮮学校の卒業生を多く受け入れ人材確保のマニュアルがしっかりしているところは素晴らしい」(同胞飲食業社協議会・尹陽太さん)など肯定的な意見が多数出された。

 一方で、「接客法に期待していたがいまいちだった」などの意見も出され、ひとつでも多くのものを学び取ろうという参加者らの意気込みが感じられた。

 意見交換会に参加した叙々苑の朴泰道社長は、「あそこではいい意味で『昔の味』を売っている。言い換えればゴマ油、ニンニク、キムチという朝鮮料理の原点を売っている。確かに見た目は従来の朝鮮料理とは違うものもあったが、ベースがしっかりしているので繁盛しているのでは」と話した。

 朴社長はまた、自店で実践しているさまざまな工夫について紹介しながら、「商品のレベルをあげるための『お金のかからないプラスアルファ』はたくさんある」と、常に向上心を忘れないことの大切さについて語った。

 参加者らは、自店の経験をざっくばらんに話す朴社長に、「誕生日を迎えたお客様に出せるような簡単なメニューは?」「おいしい石焼きピビンバを作りたいのだが」と実践的な質問を投げかけていた。

 朴社長はこれらの質問に答えながら、「明日はうちで交流会をやるので、その時もどんどん質問をしてください」と意見交換会を締めくくった。

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