統一コリア見すえ世界にはばたく人材を
東京でコリアン学生学術フォーラム
「21世紀、在日コリアンの可能性」を統一テーマに「コリアン学生学術フォーラム2002」(主催=同実行委)が24日、東京・中野のテラハウスICAで行われ、日本の大学、専門学校に通う同胞学生、朝大生ら250余人が参加した。祖国と民族の発展のために、より広範な同胞学生層から有能な人材を発掘していこうとの目的で初めて開かれた。21編の応募論文の中から、聖心女子大学文学部3年・高星愛さんの論文「大学生における性差観と『従軍慰安婦』問題の認識について」が第1回目の統一コリア賞に選ばれ、賞金20万円が送られた。
フォーラムではまず、@統一コリアA人権と文化B教育Cビジネス―の4つのテーマに分かれて分科会が行われた。論文発表の後、場内も交えて質疑応答が行われるという、活気にあふれた雰囲気の中で進んだ。 「人権と文化」は、学生たちにとっても関心あるテーマとあってか、6編の論文が発表された。国籍、母国語使用、福祉などそれぞれ扱う題材は違うものの、今の在日同胞社会が見すえるべきという点で、共通性があった。 とくに関心が高かったのが「在日朝鮮人の国籍のあり方」の問題。京都工芸繊維大学2回生・李洪章さんら2人によるもので、朝・日国交正常化と祖国統一を見据え、在日朝鮮人の権利獲得のための二重国籍を提案したもの。自らの将来にも関わる身近な問題だけに、意見や質問が最も多かった。 「統一コリア」をテーマにした論文は3編と発表数は少なかったが、「統一問題に対する在日の立場からの提言がなされたのが特徴」(座長の呉民学・朝大講師)と言える。「今後は各論でもいいから、政策にも反映できる学術的な論文が出てくることを望む」と呉氏は語っていた。
「教育」分科では、@言葉に関する問題A民族教育の権利―の2本柱で発表があった。とくにAでは、圧倒的多数の在日の子どもが日本学校で教育を受けている状況で民族学級の必要性を訴えた論文、朝鮮学校などの処遇改善のための「新外国人学校特別法」制定を提言した「緊急かつ実践的な内容」の論文が発表された。 「ビジネス分科では、従来のような在日企業の歴史や実態研究ではなく、精神面に切り込んだものが目立った」と語るのは座長を務めた朝大講師の金美徳氏。「ビジネスに対する在日の考え方が大きく変わろうとしている点が反映されている」と指摘した。 分科会の後、各分科の座長を務めた諸氏、審査委員長の洪南基・神奈川大学非常勤講師の5人がパネラーとなってシンポジウムが行われた。実は今回、「新しい産業創出のための科学技術」もテーマに含まれていたが、応募論文がなかった。座長を務めるはずだった洪氏は、「日本はノーベル賞を3年連続で受賞した。残念なことにウリナラではまだ1人も出ていない。若いみなさんががんばってぜひノーベル賞受賞者が出てくれれば。そのためには力をつけるべきで、それでこそ世界に認められる」とエールを送る。「来年以降、科学技術分野での優れた論文が出てくるのを期待している」と力を込めた。
記念すべき第1回目の統一コリア賞を受賞した高星愛さんの論文は、大学生に「性差」に対する意識調査を行ったうえで、保守的と進歩的性差観の2群を抽出し、それぞれの群で「慰安婦」問題に対する意識調査を行った。その結果から、「慰安婦」問題を手がかりに、個人の「性差」に対する考え方が女性問題を考えるうえでどのような影響を与えるかを検討している。 この論文は、「慰安婦」問題が過去の問題ではなく、現在進行形の多くの問題を抱えていることを、非常に鋭いタッチで描いた点が大きく評価された。 受賞者の高さんは、「専攻している心理学、とくにジェンダーについて在日の視点から考えてみようと思い、『慰安婦』問題をテーマにした」という。 フォーラムについては、「学部や専攻の違う者同士がお互いの考えを自由に発言、議論できる場として今後も続けてほしい」と語っていた。 「日本という狭い範囲にとどまらず、世界にはばたく人材を多く発掘できる場になれば」(実行委員長の朴栄致・留学同中央委員長)(文聖姫記者) ◇ ◇ 奨励賞(賞金5万円)の3編は次のとおり。 ・少数民族の母国語使用権としての「言語権」(李泰一・朝鮮大学校研究員、原題朝鮮語) |