春・夏・秋・冬

 日本の植民地時代に強制連行され強制労働を強いられた在日朝鮮人とその遺族の人権救済申し立てについて、日弁連は小泉首相と2企業に謝罪と補償を求める勧告書を送った。強制連行・労働と関連して政府と企業に勧告書を送るのは初めてだ

▼その1人、千葉県在住の鄭雲模さん(81)は、2年前本紙のインタビューで、「拉致」同然に連れてこられた過程をこう語っている

▼1942年2月18日のこと。突然、面事務所から呼び出しを受け、「お前、日本に行って2〜3年働いてこい」と言われた。「母の面倒を見なければならない」とつっぱねた瞬間、「このヤロウ、テメーの国じゃないか」とビンタが飛んできた。母を連れて逃げようと大急ぎで家に帰ったが、すでに遅かった。足尾銅山の坑内部長や面事務所の役人らが家の周りを囲んでいた。力ずくで鄭さんをつかみ、4トントラックに乗せた

▼鄭さんが連行された先は栃木県の足尾銅山。劣悪な条件の中での過酷な労働の日々。組長らに反発してたびたびリンチも受けた。「お前ら、1匹や2匹くたばったってどうってことない。3銭もあれば何千人と引っ張ってこれる」と罵声を浴びせられた。2年に及ぶ強制労働の日々は「死と向かい合わせだった」という

▼一部では強制連行・労働について、「すでに過去の話」「歴史」とうそぶく向きもある。では、実際に連行された人が自らの体験を証言している事実をどう見るのか。決して「歴史」などではない。彼らは謝罪、補償を受けていない。いまだ解決されぬ「現在進行形」の出来事だ。(聖)

日本語版TOPページ