民族性あふれるサロンに

伊丹市社協・事業の認定受けミニデイサービス「下河原コサリ」オープン


 同胞社会で福祉へのニーズはますます多様化している。介護保険サービス内容の充実が図られつつある一方で、地域同胞の自主的な取り組みによる地域福祉活動も重要な福祉サービスとしてその役割が期待されている。そんな中、社会福祉法人・伊丹市社会福祉協議会(以下市社協)の事業「地域ふれ愛福祉サロン」の認定を受けて10月5日、在日同胞高齢者のためのミニデイサービス「下河原コサリ」が下河原分会(兵庫・下河原市)事務所を利用し運営を始めた。今後、同胞高齢者たちが家の中だけにひきこもらず、地域の輪の中で生き生きと過ごせるようなサロンを目指す。

 先月下旬、下河原分会事務所を訪ねると1世のハルモニたちが昼食をとっていた。今月2日に行われた「第3回同胞高齢者音楽会」を目前に控え、練習のため集まっていた。

歌の練習前にみんなで楽しく食事。ハルモニたちの会話がはずむ

 卓上には朝鮮のおかずがずらりと並び、朝鮮語の方言がどんどん飛び交い、笑いが絶えない。

 数年前から伊丹長寿会のメンバーで春になるとコサリ(ゼンマイ)採りへ出かけたことから、サロンの名前を「下河原コサリ」と名付けた。自力で参加できる60歳以上の人なら誰でも参加自由だ。

 会員数は現在16人。月に2〜4回ほど集まり、カラオケ教室、料理教室、健康体操などで楽しく過ごしている。

 伊丹長寿会ができたのは今から8年前。認定を受ける前から総聯・女性同盟の支援のもとにハルモニたちが集まって活動を行ってきたが、長く続けるには市からのしっかりした支援と援助が必要不可欠だった。助成金の交付、サロン運営における指導、ボランティアの育成など…。同胞高齢者の輪を広げるための課題は多かった。

 そこで、兵庫同胞生活相談綜合センターの千モ豪副所長が中心となって市社協と掛け合ってきた。

 市社協から認定を受けてまだ1カ月ほどだが、「3年前から活動の基盤はしっかりしていた。総聯・女性同盟支部の支援もあって伊丹長寿会のハルモニたちは、認定前から分会に集まっていた。認定後もその活動内容は変わらない」(千副所長)。

 市社協の「地域ふれ愛福祉サロン」の運営ガイドラインと伊丹長寿会の活動内容が合致したので、認定作業はスムーズに運んだという。

 「運営体制はまだまだ未熟だが、伊丹地域から『地域福祉』の重要性を発信し、同胞たちの中にもっと広げて意義あるものにしていきたい」と千副所長は語る。

 同時に「下河原コサリ」の運営母体として発足したのが「トウセ(助けよう)伊丹」というボランティアグループだ。女性同盟が主体となり、サロンを全面的に支援している。

 「トウセ伊丹」は、在日の高齢者や障害者・障害児など地域の手助けを求めている人々のために活動する自主的なボランティア団体で、グループの趣旨に賛同する人なら誰でも参加できる。一時的な参加も可能だ。

 正式メンバーは今のところ3人だが、行事の際には地域同胞ヘルパーたちの手も借りる。

 活動内容には9つの項目がある。ボランティアの研修とPR活動、地域における行事への参加、老人ホームの訪問などさまざまだ。

 また、市社協の「地域ふれ愛福祉サロン」から活動助成金の交付、運営の助言・指導、市民ボランティアの育成指導なども受けている。

 代表の李慶子さんは、「民族性あふれるサロンを作るためには、同胞たちのボランティアグループが必要不可欠。まだ人手が十分ではないが、1世ハルモニのために地域に根付いた福祉活動を続けていきたい」と話す。

 現在、市からは1回の活動ごとに3000円と1人あたり200円が給付される。しかし、そのためだけの活動ではないという。

 「すべては権利獲得のため。1世ハルモニたちが培ってきたものを大事にしたいという思いで要請を続けた。新たなサロンを通じて若い世代の人たちにもその大切さを知ってほしい。これからも1世のハルモニたちが楽しく集えるサロンにしていくつもりです」
(金明c記者)

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