「歴史変えよう」3度目の挑戦
第82回全国高等学校ラグビーフットボール大会大阪府大会で大阪朝高準優勝
大阪朝鮮高級学校ラグビー部が17日、東大阪市の近鉄花園ラグビー場で行われた第82回全国高等学校ラグビーフットボール大会大阪府決勝(第1地区)で昨年度全国大会「王者」の啓光学園高校と対戦し19―41で敗れ、「花園」に一歩及ばなかった。大阪朝高が全国予選の決勝に挑戦するのは98、99年に続き今回が3度目。98年度の決勝で0―59で完敗した啓光と後半には互角に勝負を展開するなど善戦した。
啓光は高校ラグビー界の激戦区大阪で11年連続全国大会出場を果たしている実力校。 前半、朝高は試合の流れをつかめず失点を重ね、22点と大きく差をつけられた。流れが変わったのは前半戦の後半から。前半終了直前、ペナルティーを得た朝高はモールで攻め、6番韓敏文選手がトライ。5―22で前半を終えた。 後半戦は1トライを先に奪われたものの、「全国レベル」との定評を得ているFW陣がゴール直前まで押し込む好機を作り16分、23分とトライを成功させ、12―12の同点まで持ち込んだ。しかし、啓光学園の早いパス回しと機敏な動きで後半も逆転され、19―41の結果に終った。 金信男監督(41)は、「立ち上がりが悪かった。微妙なプレッシャーがあったのかもしれない。監督としての私のミスだと思っている。しかし、生徒たちは十分に力を発揮したし、とくに3年生の成長はすばらしかった。結果を結果として受け止め、新しいチームで全国制覇を目指していく」と誓った。 ◇ ◇ ノーサイドの笛が鳴ると、朝高の15人の選手はガックリと頭をたれた。膝をつき、涙を拭う。バックスタンドで声援を送り続けた同胞と学友ら3000人に深々と頭を下げ、グラウンドを後にした選手らの目は真っ赤に腫れていた。 「歴史を変えよう。この目標に向かってどのチームにも負けない練習を積んできたが力が足りなかった」。キャンプテンの孫勝くんの目からは涙が止めどもなくあふれ出ていた。 啓光の三井大祐キャンプテンが「フォワードは評判どおりの強さ。タックルも強かった」と感想を話していたように、朝高は3年前に完敗した啓光から3トライを奪うまでに実力をつけた。 3度目の挑戦。夢は果たせずバトンは引き継がれた。しかし、選手と部員、金信男監督、呉英吉コーチ(34)ら全員が「朝高のラグビーを堂々とできた」と胸を張った。啓光の記虎敏和監督も「上を目指す生徒たちのひたむきな思いがチームを強くしている」と成長を認める。朝高と友好関係を築いてきた記虎監督は、「自ら考え、発想するラグビーを」とアドバイスも忘れない。 72年、何もないところから始まった大阪朝高ラグビー部。どのクラブにも属さない落ちこぼれの集まりだったとあるOBは語る。運動場の隅でラグビーボールを追いかけ、初の試合はスパイクも準備できず、運動靴で挑んだ。日本の高校に練習試合を頼んでも断られ続け、監督自らが日本のクラブチームに助っ人として出場し、ともに汗を流しながら、協力者を探し続けた。 94年に全国大会への門が開かれてからは激戦区「大阪の壁」にチャレンジ。全国大会上位校が顔をそろえる大阪での予選突破は全国制覇に匹敵する至難の業だ。日本の伝統校に比べ朝高は生徒数が限られるうえ、ラグビー経験者もいない。整った条件が何もないなか、強豪校レベルに育て上げる前人未踏の挑戦だった。「無から有を作りだす」(金監督)気持ちで一人ひとりの生徒、朝高ラグビーにかけるOBや同胞の気持ちに向き合ってきた。 「先輩たちは高い壁にひびを入れてくれた」。試合後、2年の趙顕徳くんは語った。「必ず全国出場を果たします」。 一からのチーム作り。「花園」への挑戦は続く。(張慧純記者) 広島(サッカー)、東京(サッカー、ラグビー)はベスト4 ラグビー部門ではほかに、東京朝高が都予選第2地区準決勝(10日=大東一高校に9―17)で敗れた。 サッカー部門(第81回全国高校サッカー選手権大会各都県大会)でも、準決勝で広島朝高(16日=広島観音高校に0―1)と東京朝高(A地区、9日=帝京高校に1―2)がそれぞれ敗れた。 |