「アトピーを改善した高麗医学」

医協第25回学術報告会で報告


 今年、結成25周年(8月21日)を迎えた在日本朝鮮人医学協会の第25回学術報告会が11月10日、神戸国際会議場で行われた。報告会には日本各地から約150人の同胞医療人と医学生が参加し活発な討論を繰り広げた。

限界見えた現代医学

 報告会では李大国医協中央会長の開会の辞と朝・日国交正常化および拉致問題に対しての医協の談話発表にひきつづき、医科AB、看護、薬学、歯科など6分科に分かれ計26の演題発表にもとづき活発な討論が行われた。

さまざまな医学報告について熱心に耳を傾ける参加者たち

 注目された分科会のひとつに東医・柔整分科での「アトピー性皮膚炎」をテーマにしたディスカッションがあった。

 日本ではアトピー性皮膚炎で悩む人が多い。ステロイド外用薬の副作用により入院したり不適切治療により重症化した例も少なくない。

 恵クリニック(東京)韓啓司院長は「21世紀の医療とは:西洋医学と東洋医学とのドッキング」の演題で報告し、現代医療で完治が望めないアトピー性皮膚炎を朝鮮の伝統医学である高麗医学で劇的に改善した実例を具体的なデータをもとに説明した。高麗医学では重症なアトピーを伝統医学の一つである鍼療法、カルシウム注射、ビタミンC注射、漢方薬を用いて劇的に改善したと、賞賛した。

 韓院長は現代医学は「限界に来ている。現代医学は科学的実証医学であるが故に現在のような大成果を収めたが、あまりにも科学的医学に偏りすぎた為に、臨床的医学、即ち経験的医学を軽視した。医学においては、現代科学の機械論的思考のみでは解明できないものがある。アレルギー、リウマチは現代医学では完治が望めないのが現状である。漢方療法の効果に多大な期待を寄せて治療にあたっている」と指摘した。

医療倫理の問題で活発な論議

 学術報告会の全体会では25回目を記念して「21世紀先端医療を考える」をテーマにシンポジウムが行われた。

 パネラーの一人である兵庫県農林水産技術総合センター生物工学担当の富永敬一郎主任研究員は「ウシの繁殖技術とそれらの先端医療への応用」を報告した。富永氏はヒトで行われている人工授精や体外受精などの生殖医療は実験動物で研究開発された技術が応用されているとしながら、家畜、クローン生産に用いられている核移植技術は移植再生医療への利用が期待されると述べた。

 もう一人のパネラーであるはなクリニック(兵庫)徐昌教院長は「遺伝子の過去、現在、未来」を報告した。

 基本報告に基づいて医療倫理、生命倫理の問題、倫理的規制、歯止めをかける法律の制定など、活発な議論が行われた。現在の先進技術からすれば、優れた遺伝子だけを取り入れたヒトの製造とか性別なども生産管理可能な時代である。しかしそこで今、何のための科学技術発展か、何のための医療技術発展かが問われているような感じがする。人間社会に貢献する科学技術の発展は望むところであるが、自然の摂理を無視した行為は警戒しなければならないと思った。

 全体会ではまた、民族教育での学校保健について4つの報告があった。共和病院を主体として大阪府下にある朝鮮学校の系統的な学校保健活動とまた新たな発展方向、兵庫県内の朝鮮学校における5年にわたる性教育をはじめ歯科検診などの新たな取り組み、朝鮮学校中央保健委員会からは「健康教育の鍵」としての「ヘルス・ビリーフ理論」に基づいた新しい保健活動の方法論が提言された。

 今回の学術報告会と懇親交流パーティーには、先輩医療人とともに多くの若手・新人医療人、医学生も参加して親睦と交流を深めたが、まさに21世紀型の医協活動の芽生えといぶきを実感した意義深い集いであった。(金光錫・医協東日本本部常任理事)

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