春・夏・秋・冬 |
「共産主義という名の妖怪がヨーロッパを徘徊している」というのは、マルクスの「共産党宣言」に出てくる有名なフレーズである。このフレーズに引っ掛ければ、さしずめ今の日本社会は「世論という名の妖怪が徘徊している」ということになろうか
▼お茶の間に頻繁に顔を出す政治家や底の知れた評論家たちは、決まって二言目には「世論」うんぬんと枕詞のように唱え、自らの発言が「世論」を代弁しているかのように装う。そんな「世論」の50%が朝・日国交正常化を求めているにもかかわらず、「世論」の代弁者を装う彼らの口からは、否定的発言しか出てこない。この温度差。しょせん、拉致事件にかこつけた選挙対策、売名行為という指摘が出て来るのも当然だろう ▼しかし、そうした指摘をする向きも、貝のように殻に閉じこもったままである。「世論」を振りかざした「抗議」という名の「暴力」を恐れているのだ、という声が風の便りに耳に届いてくる ▼そんなさなか、国会の質疑応答のなかで、公安調査庁次長が拉致事件などと関連づけて「総聯に対して破防法の適用も考えている」と公言した。つい2、3カ月前なら「憲法違反だ」と、存在そのものに疑義が呈されてきた破防法うんぬんなど口にすら出せなかっただろう。さらには「冷戦の遺物」といわれ、存立そのものが風前の灯の公安調査庁が威勢良く前面に出られる機会もなかっただろう ▼しかしこの現実、これも「世論」のなせる業か。もしも現実になれば全在日同胞が監視、弾圧下に置かれる事を忘れてはならない。(彦) |