朝鮮大学校

「在日朝鮮国際人」育成

外国語学部


教養と実践の両方備える

 外国語学部(辛成芳学部長)は、国際化、情報化がますます進む21世紀、朝鮮語、日本語、英語はもちろん、中国語、フランス語、スペイン語まで駆使し、世界にはばたく民族的人材、「在日朝鮮国際人」を育てることを目標にしている。

 カリキュラムは、「教養」としての語学と、「実践能力」としての語学力をバランスよく身につけられるよう組まれており、1、2学年時には専門基礎科目を学び、3、4学年時には学生たちがそれぞれの研究テーマを深められるようになっている。とくに昨年から始まった3学年時の海外(イギリス)研修は、英語のスキルアップだけではなく、在日朝鮮人としての世界観を広げる契機にもなっている。

 また学生たちは英会話、英米文学研究、日本語研究、国際問題研究、フランス語研究などの学習サークルを通じて自らを磨き、学友とともに視野を広げ識見を高めている。

 一方、1、2学年時に英語検定試験(英検)の受験を義務化し、カリキュラムに取り入れ準1級の段階まで指導している。またTOEFL(留学希望者が必ず受験する英語能力テスト)やTOEIC(国際コミュニケーション英語能力テスト)、漢字・フランス語・ハングル検定試験など、社会に出てから役立つ資格の取得も奨励している。

 卒業生は、民族教育の英語、日本語教育のほとんどを担っている。また、通訳、出版報道、旅行、貿易関係の仕事に携わる者も多い。そのほかにも、イギリスのオックスフォード大学、ケンブリッジ大学、オーストラリア国立大学などの博士、修士学位を取得し、海外の大学、日本の公私立大学で教えている者や、米国公認会計士として世界中で活躍している者もいる。なかでも「外資系会社の秘書、日本の地方公務員(県庁の国際課)のほか、大手航空会社の国際線のスチュワーデス、予約センター、グランドホステスとして働く者も出てきているが、朝鮮語、英語、日本語の3カ国語を話せることが採用の大きな理由」(金鐘基副学部長)になっているようだ。

英会話のスキルアップ

 昨年度から始まった3学年時の海外(イギリス)研修は、シーズン前の6月後半から約1カ月間、実施される。英語の母国であり、歴史・文化遺産が多数あるイギリスでの英会話のスキルアップ、そこに集まる人々や現地の人との国際交流、異文化に対する理解を深めることが目的だ。

 昨年は39人、今年は27人が参加。3週間、ホストファミリー宅にホームステイしながら、オックスフォードとケンブリッジの2大学園都市にある数校に分散して学んだ後、イギリス国内旅行を満喫した。研修終了後、希望者はフランスやイタリアなどの周辺国も訪れた。

 研修での大きな成果は、「まずは英語のシャワーを浴びるので、本場の英語を聞いて理解するようになり、会話を積極的に交わせるようになること」(今年同行した高日健講師)と言う。実際、彼らの成長ぶりについて朝大の英語の外国人講師は、「会話を積極的にしようとする基本姿勢がよくなった」と評価する。

 また、世界を見る視野が広まる一方で、在日朝鮮人としてのアイデンティティーをよりいっそう確立させていく必要性も身にしみて感じるようだ。

 学生たちは研修中、数人のグループに分れて滞在先の各学校に通い、クラス編成の判断基準となるプレイスメントテストの結果別に配属され、ヨーロッパやアジア、アフリカなど各国の留学生たちとともに英語の授業を受けた。

 授業の後や週末には、ミュージカルや映画を観たり、美術館に足を運んだりとロンドンを中心に観光も楽しんだ。

 以下、研修に参加した3、4学年生に、研修生活と日本に帰ってからの生活の変化について聞いた。

 金美香さん(3学年、東京朝高出身)
 日が経つにつれ英語をもっと学びたいという意欲がわいてきた。クラスメートとなった各国の留学生、ホストファミリー先の人、行く先々の人と通じる言葉が英語だけで、それもシャワーのような勢いだった。必死に話を聞き返事をしていく過程で、少しだが自信もついた。同時に、そうした人と触れあううえで、在日朝鮮人としての確固たる意識を持たなければ、自分を見失ってしまうということも感じた。英語だけでなく朝鮮語もさらに勉強していきたい。

 張守基さん(3学年、神戸朝高出身)
 研修前まで会話の重点は文法に置いていたが、それよりも単語を羅列し、自分をアピールすることが大切だと思った。
 研修後、それまではあまり目を通さなかった英語の雑誌を読むようにもなった。音楽が好きなので英語の音楽雑誌を読みながら趣味を生かして英語の勉強にも熱を入れている。

 金潤雅さん(4学年、広島朝高出身)
 昨年の研修前までは、「英語は使えればいい」と考えていたが、研修を通じて英語は意思疎通の手段であり、重要なのは何を伝えるかだと思った。その人の立場によってひとつの物事でも伝える内容は異なる。私たちは在日朝鮮人という立場に立って物事を伝えていくべきだ。卒業後はそうしたことを生かせる現場で働きたい。

 李昌導さん(4学年、九州朝高出身)
 会話の目的は話(言葉)が通じればいいというのではなく、何をアピールするかということだと思う。だから研修後、社会科目、とくに国際関係について熱心に勉強するようになった。TOEICのテストにもチャレンジしている。卒業後は、民族に誇りを持って世界の人々にアピールできる人材を育てるために、教員になりたいと考えている。(羅基哲記者)

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