再開された朝・日国交交渉

「まず国交正常化」提案

朝鮮側の基本的立場


 9月17日の朝・日首脳会談と平壌宣言採択を受け2年ぶりに再開された第12回朝・日国交正常化会談(10月29、30日、クアラルンプール)。だが、実質的な問題討議で進展は見られなかった。朝鮮外務省スポークスマンは5日、朝鮮中央通信社記者の質問に答え、「日本側が国交正常化の基本問題である過去の清算を後回しにし、核問題、拉致問題という懸案問題を優先的に討議しようと固執したことで対話双方の信頼を低下させた」と、その原因について語った。会談に対する朝鮮側の基本的立場についてまとめた。

過去の清算

平壌宣言1、2項から討議を
「金でなく自尊心の問題」

 「平壌宣言履行における基本は、日本が罪深き過去を清算することである」(外務省スポークスマン)

 会談を現地で取材した本紙記者によると、この立場に沿って朝鮮側は、「まず国交正常化」という原則に基づいた交渉の推進方式を提案したという。

 日本の首相が過去の植民地支配について謝罪し朝・日の不正常な関係に終止符を打つ決断を下したことによって平壌宣言が採択された、というのが朝鮮側の認識。両国間に存在する諸問題も国交正常化を実現していく過程で解決できると見ている。

 そのため、国交正常化の早期実現と過去の清算問題を明記した平壌宣言の第1、2項からまず討議し、その他の問題も同時に解決していく―会談に臨む朝鮮側の立場は一貫していたと先の記者は指摘した。

 平壌宣言は、過去の清算を経済協力方式で解決することを明記した。

 これについて会談関係者は本紙記者に、日本と永遠に敵対関係ではありえず、今日のような緊張状態を緩和することが時代の要求だとの「大局的見地」から、また日本が謝罪の意を表明したことで、日本の置かれた立場と体面を考慮し勇断を下したと、その経緯について説明した。

 「経済協力は謝罪の意思を表す実際の行動だ。過去を清算してこそ朝鮮人民の反日感情も収まり、敵対関係も解消される。われわれが受けた被害と苦痛に対する補償は堂々と受け取る」

 関係者は日本の過去清算が両国の関係正常化の必須条件だと強調したという。

 また、ある関係者は、「われわれが日本に経済協力を哀願し焦っていると見るのは誤りだ。われわれは当然補償を受ける権利があるが、頭を下げてまで受け取る気はない。過去の清算はお金という実利の問題ではなく、民族の自尊心の問題だ」と述べている。

 朝鮮側は、平壌宣言に沿って国交正常化を先行させ経済協力を実施することを優先課題に挙げたが、経済協力の実現は国交樹立後の問題と見ている。

拉致問題

「本人と家族の意思に任せる」
被害者、家族帰国 順序踏んで実現

 会談で朝鮮側は、拉致問題解決のために今からでも政府間の約束を守って5人の拉致被害者を平壌に戻すよう強く求めた。

 朝鮮側は拉致問題を認めたのにともない謝罪表明、責任者処罰、再発防止の約束を行った。拉致被害者とその家族の永住帰国も、順序を踏んで実現させる立場だったと言える。

 「事実を認めたのに問題を解決しない法がどこにあるのか。われわれには、拉致被害者とその家族を引き止めておく何の利害関係もない」。会談関係者は本紙記者にこう語っている。「この問題は本人と家族の意思に任せる」との立場で一貫している。

 拉致被害者には20余年間の間に朝鮮で家族ができ、子どもたちは自分を朝鮮人だと思っており、中には米国人の夫もいる。ある会談関係者は「このように複雑さを帯びているので、われわれは本人の意向に沿って問題を解決しようと試みた。自分を朝鮮人だと思っている子どもたちには、衝撃が大きいので説明をしなければならない。今後どうするかの判断を下すのは本人だ」として、「5人を一度平壌に送り、家族と相談する余裕を与えるべきだ」と主張した。

核問題

「米国とのみ根本的に解決」
代弁者的振る舞いに不満

 核問題と関連しては、「米国が朝鮮を核先制攻撃対象に含めている危険な状況では、これを解明する必要と義務は(朝鮮側に)ないとの立場を明白にした」(朴龍淵外務省副局長)。

 会談を取材した本紙記者によると、朝鮮側は核問題について日本側に通報する義務はなく、安保問題に関心を持つのは良いが、この問題は米国とのみ根本的に解決できると説明した。「朝鮮側関係者は、日本側が米国のスポークスマンのように振る舞っていることに不快感を表していた」(本紙記者)。

 外務省スポークスマンは5日、「朝・日間に安保問題があるとすれば、平壌宣言を通じて、互いの安全を脅かす行動をしないとした約束を守ればよい。これは国交正常化を実現する過程で実証されよう」と述べている。

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