期間未設定の無償資金協力、借款、人道支援など

日本の対朝経済協力


 9月17日に朝・日の両首脳が署名した平壌宣言に基づき、10月29、30の両日、マレーシアの首都クアラルンプールで朝・日国交正常化会談(第12回)が行われた。平壌宣言の第2項目で双方は、財産および請求権を互いに放棄するとし、正常化後に日本が朝鮮に対して行う経済協力の問題について(今後)協議するとした。経済協力の内容は@無償資金協力A低金利長期借款の提供および国際機構を通じた人道主義的支援(@、Aは双方が適切とみなす期間にわたって行われる)B民間経済活動を支援する見地からの日本国際協力銀行などによる融資、信用貸付―などだ。日本がこれまでに実施してきた経済協力を参考に、これらの問題についてまとめた。

 @の無償資金協力とは、支援受入国政府に返済義務を課さない資金提供をすることで、日本は現在、政府開発援助(ODA)の1つとして実施している。日本による無償資金協力とはそもそも、「賠償という戦後処理的な贈与が始まり」(北方圏センター・情報index)だった。

 日本は54年からODAを開始。形態は「贈与」と「円借款」などがある。「贈与」に関する協力としては、保健・医療、生活用水の確保、農村・農業開発など人間の基本的な生活に欠かせない、いわゆる基礎的生活分野および人造り分野が大きな柱になっている。

 ちなみに日本が無償で資金協力したのは、日本と賠償条約を結んだアジア4カ国のうちのミャンマー(ほかは借款あるいは生産物・役務の提供)と、韓国とミクロネシア、ベトナム、中国などである。

 65年に基本条約、請求権及び経済協力協定に調印した韓国(請求権は放棄)には、10年間にわたり3億ドルを無償協力した。

 ミクロネシアには69年の「太平洋諸島信託統治地域に関する日米協定」に基づき500万ドルを、ベトナムには75年と76年に「北ベトナムとの経済の復興と発展のための贈与」名目で計3750万ドルを無償協力した。

 中国の場合、72年9月の共同声明で日本に対する「戦争賠償の請求を放棄」(5項目)するとして「外交関係を樹立」(4項目)。そして78年8月に平和友好条約を締結し、翌年度から日本は対中ODAを開始した。無償資金協力は2000年度までに約56億ドルに達し、引き続き実施されている。

 平壌宣言では、無償資金協力は双方が適切とみなす期間にわたって行われるとあり、期間は設定されていない。

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 Aの低金利長期借款の提供および国際機構を通じた人道主義的支援。前者は低利で長期の緩やかな条件で開発資金を貸し付けるもので、つまり円借款だ。日本のODAの約4割は借款で、電力・ガス、運輸、通信、農業など、経済インフラを中心に供与している。実施は、日本国際協力銀行(JBIC)がそのほとんどを担当している。

 韓国の場合、2億ドルの借款が実施された。中国の場合、金額は同じく79年度から2000年度までに約2221億ドルに達している。朝・日間では、無償資金協力同様、期間は未設定である。

 人道支援については、朝鮮に必要なものとして食糧、医療支援などが考えられる。

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 Bは民間経済活動を支援する見地からのJBIC(日本国際協力銀行)などによる融資、信用貸付。JBIC法では、融資または保証した資金の返済が着実に行われること(償還確実)と、収入が支出を下回らないこと(収支相償)を定めており、これは日本の民間企業による朝鮮への投資を積極的に後押しするものとなる。

 韓国の場合、3億ドルの民間信用借款を実施した。

 ちなみに日本は、ラオス、カンボジア、マレーシア、シンガポールにも経済協力を実施したが、内容は生産物および役務の無償供与であった。

 こうした経済協力によって日本はアジア被害諸国との賠償問題は「解決済み」という立場を取っており、残るは国交のない朝鮮だけとなっている。

 日本は朝鮮との国交正常化は「日韓方式」を用いて、それ以上でも以下でもないと主張している。だが、無償資金協力、借款、人道支援が「双方が適切とみなす期間にわたって」行われるのは、半世紀以上にもわたって国交を正常化していなかった諸般の事情などを考慮したものと見られる。対中ODAに類似している。なお日本は、平壌宣言第2項目で「過去の植民地支配によって朝鮮の人々に多大な損害と苦痛を与えた」とし、「謝罪の意を表明」。アジアの被害諸国に対しても度々遺憾の意を表明してきたが、名指しで謝罪したのは中国(72年の共同声明序文)と朝鮮だけである。(羅基哲記者)

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