朝鮮人強制連行 新資料発見!

軍人・軍属約9万人の未払い賃金


 第2次世界大戦中、日本陸海軍に連行された朝鮮人軍人軍属に対する未払い賃金が日本の国庫に供託されたことを示す具体的な資料が発見された。朝・日合同の朝鮮人強制連行調査団の朝鮮人側事務局長、洪祥進さんが明らかにした。供託人員は陸海軍、復員者および死亡者を合わせて8万9588人で、金額は約9131万円(当時)。現在の金額に換算すると、約1兆4491億円に上る。この供託金について外務省アジア局は1956年に作成した説明資料の中で、「請求権問題と一括して交渉することが得策である」と助言している。朝・日間では平壌宣言で「請求権を互いに放棄」するとしたが、同事務局によると、「日本が朝鮮に対して実施する経済協力について協議する際の参考資料のひとつになる」と強調する。また、「農耕勤務隊」の名目で強制連行が行われたことも、大阪調査団の塚崎昌之さんが防衛庁から発見した資料などで裏付けられた。いずれの内容も、28日に東京・お茶ノ水の中央大学駿河台記念館で開かれる全国交流集会「今、朝鮮人強制連行調査は」で報告される予定だ。(羅基哲記者)

未払い賃金が供託されたことを示す資料

 朝鮮人軍人軍属とは、軍要員として軍属に徴用され、日本軍の基地建設などに動員された朝鮮人。連行先は日本国内から中国、東南アジアまで広範囲に及び、その数は36万4000人(1953年作成の公安調査庁の資料)とも24万4000人(今年9月作成の厚生労働省の資料)とも言われる。

 今回明らかになった未払い賃金の問題は、日本外務省が2000年12月に公開した外交記録、「太平洋戦争終結による旧日本国籍人の保護引揚関係 朝鮮人関係遺骨送還関係」の中に含まれており、題名は厚生省引揚援護局作成の「朝鮮出身のもとの陸海軍軍人軍属(含死亡者)に対する給与について」。

 47年に制定された未復員者給与法(法律182号)に基づき、日本人同様、朝鮮人にも未払い賃金を支払おうとして作成されたものと見られる。しかし、実際に日本政府から支払われること、ひいては本人あるいは遺族に連絡されることはなかった。

 資料で明らかになった賃金が未払いとされる人は8万9588人で、内訳は復員者7万1218人と死亡者1万8370人。

 ちなみに朝鮮人軍人軍属の問題について日本は、日韓国交樹立(65年)後の72年に、約2万人分の死亡者名簿(今回発見された資料と複合するかは不明)を韓国に渡し、韓国は申請した遺族に対してのみ、75年7月から2年間の期間を設けて補償を行った。なおこのお金は日本からの3億ドルの無償資金協力からねん出。また在日同胞はこの補償から除外された。

 平壌宣言を通じて日本は朝鮮に対する経済協力、無償資金協力を約束しており、今後予定されている朝・日会談の席では、未払い賃金、死亡者の問題について自ら朝鮮側に具体的な資料を提供する必要がある。

新たに「農耕勤務隊」判明

防衛庁、厚生労働省、北の証言など

 防衛庁から発見された農耕勤務隊に関する資料は、朝鮮軍管区参謀長が船舶参謀長に日本に送り出す兵士の船の手配を依頼した1945年4月7日付の電報文。4種類の兵士の送出が記録されている。

 輸送計画人員は計約4万人。このうち約2万6400人分の召集地と見られる地域が記載されており、京城6300人、平壌1万3015人、咸興1800人、羅南5320人とある。朝鮮半島北部に集中しているのは、戦争末期に北部から大々的に強制連行が行われたことを裏付けるものでもある。

 これらが計画どおり実行されたかはまだ確認されていないが、真相調査団が今年9月に厚生労働省に求めた行政文書開示に対する決定通知書には、朝鮮半島出身の旧軍人名簿が部隊ごとにあるとし、その中に「第1、第3、第4、第5農耕勤務隊」が含まれている。

 実際、平安南道順川郡に住んでいた金致隣さん(1924年生まれ、現在朝鮮在住)が44年11月に「赤紙」で召集され、平壌で訓練を受けた後、釜山、下関経由で愛知県の野田に「第4農耕勤務隊」として連行されたとの証言もある(昨年7月出版のフォトジャーナリストの伊藤孝司著「平壌からの告発」に詳細な内容)。

 なお集会は、10月19〜20日に予定していた「朝鮮人強制連行真相調査団第7回全国交流集会in神戸」が来年度に延期されたことから現時点での最先端の調査研究を公表し、神戸集会に向けて、その結果を全国的な調査に拡大するために東京で開催することになった。

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