釜山アジア大会 -上-

北南の人々が演出した「統一祖国」

ひとつになった聖火、実現した民間交流


 第14回釜山アジア大会には北側から330人の選手団が参加し、291人の応援団が南を訪れた。南の国際大会に北の選手が参加するのは分断史上初めてで、これだけ多くの北の人々が南の地を踏むことにより、釜山市は大会期間中、統一の熱気に包まれた。北の選手・応援団の精力的な活動、南の人々の熱烈な歓迎、北南の熱い交流は、今大会がまさに統一への大きなステップだったことを内外に示した。3回にわたりアジア大会に吹いた「統一フィーバー」の様子を伝える。

統一を確認しあった開幕式

開会式で手を堅く取り合って入場する北南の選手たち

 各国の入場が終わり、「アリラン」の旋律に乗って北の300人と南の300人による統一入場が始まると、釜山アジア大会メインスタジアムが揺れるようなスタンディングオベーションがわき起こった。統一旗を持つのは、北のリ・ジョンヒ(女子サッカー)と南の皇甫盛一(男子ハンドボール)。北と南の選手がお互いに手をかたく握り締め高く掲げながら「ひとつ」であることを誇らしげに行進する。

 世界を驚かせた2000年9月のシドニーオリンピックでの北南統一入場から2年、再び釜山アジア大会で実現した北南統一入場。シドニーでの統一入場が全世界にひとつの朝鮮を大きくアピールしたものであったなら、南の地での統一入場は、まさに北と南、そして海外のすべての民族自らが統一への意志を確認しあった歴史的な出来事だった。北南共同宣言から2年、シドニーから釜山へ、紆余曲折を経ながらも確実に民族の力で統一を手繰り寄せていることを物語っている。

 開会式のハイライト、聖火点火でワールドカップベスト4を達成した南チームのキャプテン・洪明甫が最終ランナーである北のケ・スニと南の河亨柱に聖火を手渡した。白頭山と漢拏山で採火した聖火を北と南の選手がともにしっかりと握り締め、トラックをゆっくりと走り始めると、スタンド全体からふたたび豪雨を思わせるような拍手が鳴りつづけた。北南選手により点火された聖火の炎は、統一の障害を焼き尽くすかのように大きく、高く燃え上がった。

 開会式を伝える南の各新聞にも「手を取り合う南北、統一の火をつけた」「南北はついにひとつになった」と大きな文字がおどり、統一への大きなステップとなった開幕式の意義を伝えた。

「心から歓迎します」

「万景峰92」号の到着を歓迎する釜山市民

 開幕式の前日、9月28日朝、北側応援団を乗せた「万景峰92」号が釜山市のタデポ港に到着した。北の応援団を一目見ようと集まった市民の数は数千人。子供から老人まで、「北の応援団を心から歓迎します」「7000万の念願、統一祖国を実現させよう」などと書かれた横断幕を掲げて手をふり、農楽隊が統一旗をふりながら踊りと演奏で出迎えた。

 到着の2時間前から待っていたというユン・ミギョンさん(33)は、「同じ血筋を引いた北の人たちとこのように会うことができてうれしくて仕方がありません。1日も早く統一を実現しなければという気持ちをおさえられないでいます」と興奮した口調で話す。また、キム・フンさん(32)は、「普通の北の人たちが釜山に来ることができるなんて誰が想像できたでしょう。奇跡のようです。これも6.15共同宣言があったからこそ。6.15共同宣言の実現こそが統一への道を開くものです」と語る。

 291人にものぼる北側応援団は今大会、大旋風を巻き起こした。どの選手よりもスターであったし、応援団の行くところ常に南の人たちが波となって押し寄せた。南のマスコミは特別取材班を編成し、北の応援団を追いつづけた。競技に向けられたカメラよりも応援団に向けられるカメラの方が何倍も多いという現象が起こり、連日、テレビ各局は多くの時間をさいて応援団の1日を詳細に伝えた。そして北と南による共同応援は、すでに統一は実現したかのような感動を人々に与えるものであった。

 朝鮮南海を臨む釜山に「万景峰92」号が停泊し、特別な人間でなく民間レベルでの、大人数による交流が実現したことこそが、今大会のこれまでの違った次元へと統一実現への路程を引き上げたものと言えるだろう。(琴基徹、千貴裕記者)

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