そこが知りたいQ&A
ケリー特使が訪朝したが
核・ミサイルなど一方的な要求だけ通告
Q 3〜5日、ケリー米大統領特使が訪朝したが。
A ケリー特使は国務省東アジア・太平洋問題担当次官補で、国務省朝鮮半島和平交渉担当大使、ホワイトハウス国家安全保障会議アジア担当局長、統合参謀本部将官、国防総省高官らが同行した。 Q 朝・日平壌宣言発表後の訪朝だけに注目されたが、どのような話し合いがなされたのか。 A 報道によると、双方は、3回の会談を行ったという。今回の特使訪朝は、@米国の朝米対話再開に対する考えA対朝鮮政策の説明を聞くこと―にあった。だから朝鮮側は特使を受け入れた。 ところがケリー特使は@については言及せず、Aについてのみ「大量破壊兵器、ミサイル、通常戦力、人権、人道」などの問題を取り上げ、米国側の要求を一方的に通告した。 これに対し朝鮮側は、核問題に関するすべての国際的合意の順守と、ミサイル発射実験の無期限凍結を確認するなど、従来の立場を再度明らかにした。 Q 進展はあったのか。 A 朝鮮側は7日、外務省スポークスマンを通じ、「特使は『憂慮事項』なるものを取り上げながら、核およびミサイルと通常兵力、『人権問題』などに対する米国の一方的な要求をわれわれがまず解決してこそ、朝米関係はもちろん、朝・日、北南関係も順調に進展するであろうと極めて威圧的でごう慢な姿勢で臨んできた」と指摘しながら、「ブッシュ行政府が引き続き固持しているわれわれに対する『悪の枢軸』教理と、われわれを核先制攻撃の対象に選定したことも撤回せず、一方的な強硬敵対視政策にしがみついていることがはっきりした以上、われわれも特使にそれらに該当する原則的立場を明らかにした」と強く反発した。 一方の米側は、ケリー特使が5日、ソウルで発表した声明文で、「率直な対話ができた」と強調。双方の評価は相矛盾している。 Q 今後、対話再開など具体的な動きへとつながっていくのか。 A 朝鮮側の立場は終始一貫している。 朝鮮は、ブッシュ政権発足時に外務省スポークスマンを通じ、「われわれは理性的な米国政治家との協議を経てこれまで築いてきた朝米関係進展については評価するが、これをよしとしない勢力には期待しない」(2001年1月25日)と表明している。また、ブッシュ大統領の「悪の枢軸」発言に際しては、「事実上の宣戦布告である」としながら、「『打撃』の選択権は決して米国のみに与えられたものではない」(2002年1月31日)と厳しく非難した。 昨年6月にブッシュ大統領が声明を発表して対話を呼びかけた際にも「前提条件のついた対話」「朝鮮を武装解除するための対話」には一切応じない、という立場を明らかにしている。 一方、米政権は対朝鮮政策について国務省を中心とする対話・交渉グループと、国家安全保障会議を中心とする軍事力行使も辞さない強硬派の2つに分かれていると指摘されており(グレッグ元駐韓米大使)、今会談に対する「前進」との評価は国務省を中心とした側から出ているものだ。 威圧的な態度の一方で「前進」と評価しているのは、米国側の対朝鮮政策がいまだ定まっていないことの表れだといえる。 トーマス・ハバード駐韓米国大使は14日、ソウルでの講演で「北との関係では、行く道がまだ遠い」としながらも、「米国は引き続き北との問題を対話で解決するつもりであり、攻撃の意思はまったくない」ことを明らかにした。 朝米対話が再開されるのかどうか、それが今後の焦点になってくるだろう。 |