春・夏・秋・冬

 イラク攻撃論議がここに来て、また活発になり始めた。火付け役は、いわずと知れた米ブッシュ政権である。イラクの国連査察受け入れ表明にもかかわらず、ブッシュ大統領は攻撃の必要性、必然性について、当たり前のごとく説いて回っている。要するに、フセインという人物そのものの存在が我慢ならないのだ

▼しかし、アルカイダ掃討の次はイラク、ということがなぜ既定路線であるかのように語られているのだろうか。アルカイダ・ビンラディンとの関係を各紙は報じてきたが、それにしても、公然と「制裁」を受けなければならない理由がよくわからない

▼政治と経済は表裏一体といわれる。では経済的な側面から観察するとどうなるのか、と紐解いて見たのが、これまで世界同時不況の原因や、市場経済の限界について鋭利な指摘を行ってきた金子勝慶大教授が書いた「長期停滞」

▼金子教授はエンロン、ワールド・コムなど米巨大企業のモラルを踏みにじった倒産=米国経済の信用の失墜、加えてITバブルの崩壊など、その危機的状況について言及しながら、今や市場原理主義は論理破綻をきたしている、と結論する。そして、米国がその泥沼から這い上がるためには昨年9.11以降の戦争を継続して「有事に強いドル」を演出、米国内に吸い上げるほか、道はないとも

▼数字やグラフの並ぶ経済はとっつきにくいが、市場経済回復のカンフル剤は戦争という指摘はわかりやすい。だからイラク攻撃、そして対北強硬姿勢なのか、と先日の米大統領特使派遣の米国側の狙いまで読めてしまった。(彦)

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