科学技術発展で民族の繁栄を

科協第42回学術報告会、北南、在日3者が初のシンポ


金剛山に自生する植物について紹介する北の科学者
 在日本朝鮮人科学技術協会(科協)の第42回学術報告会が5〜6日、都内で開催された。今回の報告会には、北と南の研究者が初めて参加し、2日間にわたって学術交流「科学技術シンポジウムT、U」が行われた。また初日には全体会議と分科会、宴会が催された。

 今報告会は、6.15共同宣言発表後、北南間の各種協力・交流事業が進む中で、北と南、科協3者の科学技術者が初めて一堂に会し、それぞれの研究成果と事業内容を報告する場となった。

 科協の黄附^会長はその意義について、「祖国統一の確固とした展望が開かれた新しい時代の要求に沿って、在日朝鮮科学者、技術者、生産企業家らが進むべき道を示すもの」(全体会議での報告)と語った。

 また、南側代表団の鄭革・韓国科学技術部自生植物利用技術開発事業団団長は、「科学技術は互いの政治理念と思想の違いを簡単に乗り越えられる分野」と指摘し、北側代表団の洪鐘輝・朝鮮科学院局長は、「わが民族の科学技術を世界レベルに引き上げていくひとつの機会」だと強調した。

 「北と南、在日の研究者たちによって科学技術を発展させることは、民族の繁栄につながり、祖国の統一に寄与するものになる」(科協の李時求常任顧問)

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 初日、東京・渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで開かれた「シンポT」のテーマは「ウリナラ自生植物の保全と開発利用」。

 科協生物・農学専門委員会の朴俊泳委員長が基調報告を行い、植物資源を民族の財富として利用するには、遺伝子を保存するとともにその基盤となる情報を電子化して利用者に提供するサービスを展開すべきだと述べた。また、北南でそれぞれ異なる名で呼んでいる植物名を統一していく必要性も提起した。

 つづいて、北南双方からの報告が発表された。自生植物の分類と植物誌発刊事業と関連して、朝鮮科学院植物学研究所の李用載・研究員が北側での植物分類分野で成し遂げた成果と「朝鮮植物誌」および「朝鮮胞子植物誌」発刊事業における経験について、ソウル大学の朴鐘郁教授が2010年の完成を目指している朝鮮半島綜合植物誌発刊事業の計画案と展望について言及した。

 また、韓国科学技術部自生植物利用技術開発事業団の鄭革団長が植物誌作成と有用植物の開発および利用に関する事業団の活動と今後の展望について、朝鮮科学院の金東史科学参事が開城一帯で栽培される高麗人参から新たに発見した有用成分についてそれぞれ報告した。

 2日目の「シンポU」は「科学技術情報データベースの構築」をテーマに、東京・小平市の朝鮮大学校で開かれ、張炳泰学長が歓迎のあいさつを述べた。

 基調報告に立った科協コンピューター専門委員会の李相春委員長は、このほど朝鮮の科学院とEメール送信ができるようになったことにふれ、北と南の報告を聞きながら、在日の科学技術者がどのような方法でデータベースの構築に協力することができるかを模索していきたいと強調した。

 科学技術インフラ(情報の流通・利用)部門を担当する北側の李相怐E朝鮮科学院中央科学技術通報社博士院院長と、南側の金泰中・韓国科学技術情報研究院(KISTI)情報コンテンツ開発室長がそれぞれの事業内容を紹介した。

 また通報社の権載正処長が自社運営のWebシステム「光明」について、KISTIの韓善和海外情報事業室長がWebサイトを利用して海外の科学者、技術者とネットワークを構築していることについて報告した。

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 一方、初日に行われた分科会(数学、物理学、化学・材料、生物・農学、機械および自動化・電子、コンピューター、土木・建築)では、科協のメンバーと南の研究者らが計38編の論文を発表した。全体会議では、黄会長の報告の後、総聯中央の呉亨鎮副議長が同常任委員会の学術奨励賞と技術開発賞を伝達し、前者に選ばれだ基哲さん(東京支部)が「素粒子物理学の最近の課題」と題し、後者に選ばれた柳革烈さん(同)が新たに開発した「安否情報確認システム」と題し受賞講演を行った。(羅基哲記者)

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