世代を越えて -女性同盟結成から55年-
焦らずゆっくり、それが肝心
福島「キッポ会」会長 ゙明美さん
県内同胞人口2114人(1999年末の統計)の福島県で、0〜12歳の子供を持つオモニたちの集い「キッポ会」が発足したのは、4月のこと。郡山市に住む゙明美さん(40)はその会長である。
会の結成は、昨年開かれた19期大会後、県内3地域で毎年4月に行われていた「新入生祝賀会」を、県単位で行おうとしたのがきっかけだった。ここ数年、民族学校の生徒数の減少が問題視される中で、若いオモニたちの関心を少しでも学校に向けようとするのがねらい。しかし、若い世代の中では「もう、学校の勧誘はやめて」という拒否反応も見えはじめていた。 福島県は、北海道、岩手県に続き、日本で3番目に広い面積をもつ県である。民族教育を受けさせるためには幼い子供を寄宿舎に入れねばならぬ事情もあり、若いオモニたちの間では「学校でイベントをするなら行きたくない」という声も出たという。民族教育は必要、でも、親子が離れて暮らすのは幸せなのか…。 こうした想いは地方で暮らす多くの親たちが抱くものである。女性同盟では、県内に暮らす多くのオモニたちが無理なく参加できる「ゆるやかな場」づくりに力を注いだ。実行委員会は、子供を朝鮮学校に通わせるオモニと、日本学校に通わせているオモニ、そして同胞男性と結婚した日本のオモニも含めて構成。討議を重ねる中、あるオモニから「洪昌守選手を呼べないかしら」との提起があった。 「来てくれるだろうか?」。不安はあったが、県単位で「こどもフェスタ」を開くのは8年ぶりのこと。子供やオモニたちに「民族の誇り」を持ってもらいたいという想いが実行委員を突き動かした。 洪選手の参加も決まり、4月27日のイベントには200人以上が参加した。「当日は日本の学校の運動会を途中で抜けて、2時間もかけて4人の子供を連れて来たオモニもいた」。会場の飾り付けや食事もすべて手作り。洪選手は、福島初中に来た感想を「僕が通った東京第6も生徒が少なかった。でも俺はやっぱりウリハッキョが好き。自分の子がひとりでもウリハッキョに入れる」と言った。また、婚約者の仁淑さんも「寄宿舎に入れることになっても?」との問いに、「寮母になっても入れる」と話し、拍手をもらった。洪選手立会いの下で「キッポ会」は結成、゙さんは会長になった。 「子供を朝鮮学校に入れるかどうかはたしかに大きな問題。でも、焦ることはないと思う。学校のイベントなんかに参加して、じっくり見極めたらいいと思う」。イベントの知らせを出したとき、すぐに「無理」と返信はがきが送られてきたときにはさすがに参った。でも、県内6カ所に設けられた児童教室で、子供に朝鮮語を学ばせている親がいることを思い返し「まずは一歩ずつ」と考えるようになった。「自然なつきあいが続けばいい。そこから何かが生まれるかも知れない」。゙さんの試行錯誤は続く。(金潤順記者) |