トンム、あなたを愛しますU
七十歳を過ぎ
死がまた一歩近づいたのを感じるとき
かりそめの生のかけらは
記憶喪失になって全て消え去り
奥深く秘めていた生の真実が
暗闇のなかのほたる火のように
ふわりふわり甦る
忘却の谷間に埋めた
真実の破片をさぐり
過去へ 過去へ 時間の迷路をたどっていく
時間のかけらはパズルのようにつながり
そこに まだ現像されていないネガが
歳月を超えてはっきりと焼き付けられて現れる
そのおぼろげな記憶の破片のなかで
私の生の内なる声がささやく
何処にいるのだろう
大きな足取りで死地へ発ったあの若者は
いまだ終わらぬ分断の歴史の裏道で
今も傷ついた足を引きずりながら
どの山のふもとを歩いているのだろうか
鉄条網を越え降りしきる雪のなかを
今も癒えぬ足を引きずりながら
どの深い谷間を越えているのだろうか
(略)
ほんの五分間
あの瞬間の熱い眼差しは
いつの間にか 私の生の奥深く入り込み
五十余年間 静かに息づいていたのか
未完成の憐憫の種子は悲哀の芽になり
いま愛の花を咲かせたのか
何処にいるのだろう
彼が何処で生きていてもう一度会えるなら
今こそはっきりと答えよう
私もあなたを愛していると
リュ・チュンド
(詩集「忘れ得ぬ人々」より。問い合わせは祖国平和統一協会TEL
03・3590・8190) |