グローバル新風

ロンドンにて


 今年の初めからロンドンに来ている。というわけで、このコラムは大英博物館のリーディングルームで執筆中だ。

 ここはマルクスやコナンドイルも通ったという場所だけに、われながらえりを正しながらも、賢人たちに近づけるような錯覚に浸れるのがうれしい。

 リーディングルームを出れば、周りの部屋にはロゼッタストーンをはじめエジプト、メソポタミア、ギリシャ、ローマなどの宝が所狭しと並んでいる。大英帝国時代に分捕った物が多いようだが、しかし保存状態はよく、世界中の人が訪れる。

 大学で歴史地理を専攻した私も足しげく通っている。入場料が無料なのはうれしい。大英博物館をはじめ、ここのミュージアムやギャラリーは、その内容の豊富さにもかかわらず無料で入れる所が多い。映画やミュージカルなども含め、文芸は総じて安い。

 しかし一般の物価は非常に高い。とくにし好品の類は容赦がなく、タバコなどは日本の2〜4倍はするし、外食をするにも神経を使う。

 なので、ロンドンが好きか嫌いかは、難しい問題だ。

 ロンドンに来てもっとも意外だったのは、人種の多様さだ。ここにはアングロサクソンだけでなく、黒人やインド人が多い。大英帝国の首都だったロンドンが、多くの遺産とともに抱え込むことになった人々だ。

 そのせいか、深刻な社会問題もあるようだが、コスモポリスとしての歴史が長いせいか、何か落ち着いたものを感じる。「ロンドンに飽きた時、それは人生に飽きた時」という有名な言葉があるが、なるほど味のある所だ。
(李達英=朝・日輸出入商社pulgasari@yahoo.co.jp

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