女のシネマ

カンダハール

うち捨てられたアフガンの悲劇


 繰り返される内戦、荒廃した国土、目をおおう飢餓、1000万個以上と言われる地雷―タリバン支配下のアフガニスタンの惨状を描いたセミ・ドキュメンタリー映画。16歳でカナダへ亡命した28歳の女性ジャーナリストの実体験に基づいている。

 ナファスは、亡命直前に地雷で足を失い、一人残った妹を救うために、カンダハールへ向けて旅立つ。タリバン政権の過酷な女性抑圧で人生に絶望した妹が、20世紀最後の皆既日食の日に自殺することを予告してきたのだ。ナファスがようやくイランとの国境の町にたどりついたのが、日食の3日前。

 気もそぞろにカンダハールへ向かう途中、さまざまな人と関わっていく。僅かな援助金を受け取って国連の難民キャンプを発ったものの、強盗に遭い再びキャンプに戻る一家。食べるために入った神学校の授業についてゆけず、放校となる少年。かつての対ソ戦の戦士、今は住民の診療にあたるブラック・モスリムの米国人。赤十字キャンプでせしめた義足を売りつける片手の男。

 ナファスの旅は、アフガニスタンのこの20年間の数多の悲劇をなぞらえ確認していく。何よりもこの悲劇は、昨年9月の米国テロ事件以前には、世界からことごとくうち捨てられてきたものである。

 劇中、最も印象深いシーンがある。赤十字のヘリコプターから次々と投下されるパラシュートにくくりつけられた義足と、それをめがけて一斉に駆け出す松葉杖の男たち。ひらひらと舞い落ちる義足と、男たちの真剣なまなざしとがないまぜとなる珍妙な光景に、胸を衝かれる。

 う余曲折の果てに、ナファスが紛れ込んだのが花嫁行列。のびやかな歌の唱和と色とりどりのブルカ。息をのむ映像美に、悲劇の中でも連綿と続く人間の暮らしを垣間見た思い。

 映画は、テロ事件の7カ月前に撮られたもの。モフセン・マフマルバフ監督。85分。イラン=フランス合作。新宿・武蔵野館で上映中。(鈴)

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