ざいにち発コリアン社会

長身生かした空中演技

スノーボーダー  金九さん


プロ目指し練習に励む金九さん


 ウィンタースポーツの定番として愛好者を増やし続けているスノーボード。1998年の長野冬季オリンピックからは、ハーフパイプなど一部の競技が公式種目に加わった。西日本最大級のスポーツ用品店「スポーツタカハシ(本店=大阪・道頓堀橋)」のチームスポタカに所属するスノーボーダー、金九さん(24)は、「プロになり、祖国の国家代表としてオリンピックに出場する」のが目標。そのために、日夜練習に励んでいる。

大会優勝でスカウト

 スノーボードの魅力は、「横乗り」にあると言える。「そう快感」「浮遊 
感覚」「スピード」などはスキーでも体験できるが、スノーボードの場合、ボードに対して横向きになって操作する微妙なバランス感覚が求められ、それに魅せられる愛好者が多い。

 オリンピック種目になったハーフパイプとは、パイプを半分に切った形のコースの縁を利用して、ジャンプや空中演技を行い、技の難易度と完成度を競う競技。

 金さんは、身長184センチ、体重74キロという恵まれた体格を生かし、ダイナミックなジャンプと空中演技を披露する。その姿は専門誌でも度々紹介され、注目を集めている。愛称は「グー」。名前(九)の朝鮮語読みだ。

 チームスポタカには現在、5人のプロ、金さんを含む2人のアマチュアの計7人が所属するが、同胞は金さん1人である。

 スノーボードを始めたのは20歳の時。同僚の朝銀職員とともにチャレンジしたのがきっかけだ。

 2000年2月、23歳の時にスポーツタカハシが主催したエアーセッション第1回大会(約100人参加)に出場し、豪快な空中演技を披露して見事優勝した。この大会の競技種目であるビッグ・エアーは、ジャンプ台から飛び出し、空中演技を披露して着地するというもの。参加者のほとんどが左右への横転を行ったが、金さんだけがバックフリック(後方宙返り)という極めて高度なテクニックを披露した。最も高く飛んだ選手に与えられる「ビッグ・エアー賞」も同時に受賞。その技量と度胸を買われてスカウトされ、職場の了解を得てスノーボードの道を歩むようになった。

7メーカーがスポンサーに

 好調な時には、ビッグ・エアーで高さ17〜18メートルまで飛ぶ金さん。

 昨年8月には、岡山県で開催された、ビッグ・エアーの大会で、豪快な空中演技にチャレンジ。見事成功し、ソルトレイク冬季オリンピック日本代表に内定している選手(6位)を抜いて5位に入賞した。これを機に一気に関係者の脚光を浴び、FOURSQARE、FLUXBINDINGS、SIMS、AIRWALK、DICE、drop、doeriの7メーカーがスポンサーとしてつくようになった。

 ただ、ビッグ・エアーはオリンピック競技にはなく、プロとしても認められていない。大きなジャンプ台を飛んで華麗な演技を披露し、まぐれでも着地に成功すれば、好成績を収められる可能性があるからだ。

 そのため金さんは今年から、プロ資格もあり、オリンピック種目にもなっているハーフパイプにチャレンジしている。資格を得るには、全日本選手権で上位5位に入賞するか各種大会でポイントを獲得し、プロテストを受けて合格しなければならない。金さんは現在、岐阜県内の白鳥高原にこもり、2月初の全日本選手権スノーボード大会西日本地区予選に向けて練習を重ねている。

ボクシングで培った根性

 「国家代表」を目標にするのは、「アボジの死後、女手ひとつで兄弟2人を朝鮮学校に送ってくれたオモニ、朝鮮人として誇りを持って努力すれば必ず報われるという心構えを教えてくれた朝高ボクシング部の梁学哲監督に対する恩返し、そして、プロの道に進むことを許してくれた朝銀の人々の期待に応えるため」だ。

 練習は1日、朝8時から5時までみっちり行う。

 「サラリーマンが9時から5時まで働くのと変わりない。これが僕の仕事だから。努力が報われるよう、ほかの選手が休んでいる時も練習に励んでいる」

 プロを目指すほとんどの人がスキーヤーかサーファーだが、金さんはボクシングで培った「努力」と「根性」でプロを目指している。

 今年は、世界中から多くのライダーが集る米国のマウントフッドとニュージーランドでトレーニングも行う。一方で、夏には朝青大阪・堺支部東班班長として、サマースクールの動員も行う予定だ。

 「与えられたチャンスを生かし、祖国の栄誉を世界にとどろかせたい」と意欲を示す。(羅基哲記者)

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