2002年 平壌の迎春
新たな飛躍の年に
市民の表情にみなぎる自信
「2002年を新たな飛躍の年に」―新年を迎え、平壌に躍動感が満ちている。昨年は「苦難の行軍」と呼ばれた試練を克服し、迎えた最初の年であった。朝鮮は経済復興のための土台を築き、国家戦略ビジョンである「強盛大国建設」の実現に向けて着実な1歩を踏み出した。2002年の展望を語る市民たちの表情も明るく自信にあふれている。【平壌支局】
万寿台の人波
1月1日0時、平壌市内に「金日成将軍の歌」の旋律が鳴り響く。市の中心部にある人民大学習堂、その大時計の鐘の音がメロデイーを奏で、新年の幕開けを告げる。 今年は、金日成主席の誕生90周年にあたる。新年を迎えた市民たちも、その意義をしっかりと感じ取っている。 「鐘の音を聞き終わるまで、絶対帰らないから」。夜のメインストリートをもう少し歩きたいと親にせがむ子供たちの声が聞こえる。 大晦日の夜、多くの市民が、金日成主席の銅像がある万寿台の丘を訪れる。銅像の前に花束を進呈してあいさつをする。平壌市民の新年の恒例行事である。 この日、平壌のメインストリートの街路樹は美しいネオンでライトアップされる。バス、路面電車など市内の交通機関も終日運行。玉流館、清流館などのレストラン、飲食店も、大晦日から正月2日まで特別営業を行う。 人波が絶えない万寿台芸術劇場前で、記念撮影の営業を行う写真館の職員によると「今年は例年よりお客さんの数が多い」という。 「『苦難の行軍』に勝利して迎えた2001年、すべての国民が新たな気持ちでスタートした1年でした。経済を含め、すべての分野が確実に改善の方向に向かって進みだした。大晦日、万寿台の丘で記念写真を撮る市民たちの表情を見ながら、その変化をあらためて実感します」 カメラのシャッターを押し続ける職員は「朝鮮は、より高い目標に向かって前進する。金日成主席誕生90周年を迎える新年は特別な1年になるでしょう」と期待を語った。 団らんのひととき
いつもは離れて暮らす家族、親せき一同が集まり、新年を祝う。これもまた、平壌の一般的な正月の風景である。 「大晦日の夜から元旦の朝まで。わたしたち家族が年間を通じて一緒に過ごすことができる、唯一の時間です」 観光旅客自動車事業所の運転手、鄭峰吉さん(57)の家族は皆、サービス業に従事している。長女はアヒル料理専門店のコック、娘婿はパン工場の調理士、末娘は玉流館のウエートレス。全員の休日が一致することが、ほとんどない。 大晦日だけは、各自、酒や料理を持ち寄って団らんの一時を過ごす。家族の中に、コックもウエートレスもいる。一流レストランにも、引けを取らないと、鄭さんは笑顔で語った。 居間にあるテレビを観ながら楽しい会話が始まる。この日は、政治や経済、文化、スポーツなど1年間の出来事を回顧するプログラムが放送される。 「テロ報復戦争以後、米国のごう慢な態度は目にあまる。ブッシュ政権は『反テロ』を口実に朝鮮敵対視政策を強行しようとしているらしいが、今回も朝鮮は米国の脅しに1歩も引かなかった」 「わが国の自主権に対する侵害は許さない、主張すべきことは、はっきり主張する。まったく堂々たる外交を展開したものだよ」 生活難がすべて解決されたわけではない。朝鮮を取りまく政治情勢も厳しかった。それでも、21世紀の最初の年を振り返る家族の話は何故か誇らしげだ。 そして1月1日0時。テレビから「愛国歌」が流れる。 「金正日将軍の万年長寿を祈願して乾杯!」 家族全員が祝杯を上げ、新たな年を迎えた。 「より大きな成果を」 1月1日に発表された労働新聞、朝鮮人民軍、青年前衛共同社説は、金日成主席誕生90周年を迎える2002年を「強盛大国建設の新たな飛躍の年」にすることを全国民に呼びかけた。「経済強国建設の輝かしい成果で民族最大の祝日を輝かせよう!」というスローガンも打ち出された。 金正日総書記は共同社説を通じて国の進路を明らかにし、人民は共同社説で示された課題を実現していく、それがこんにちの朝鮮で生まれた新たな伝統であると国内のメディアは指摘している。 万寿台を訪れた市民たちも新年の抱負と決意を語っていた。 「今年もがんばりますよ。昨年よりも大きな成果を必ず達成します」 鄭さんの家族は元旦の早朝、万寿台を訪れた。この日は、彼らにとっての初出勤日。新年のあいさつを終えた家族は新たな決意を胸に、それぞれの職場へと向かった。 |