取材ノート

半世紀の時空を越えて


 正月休みに昨年、取材したあれこれに思いをめぐらしていると、ふっとある詩が頭に浮かんできた。

 「子どもたちよ、これがウリハッキョだ」。1、2世の多くが知っているといっても過言ではないこの詩は、近年、朝鮮学校の教科書にも登場するようになった。

 一昨年の冬、この詩は曲にもなった。南朝鮮の歌手、リ・ジサンさんがメロディーをつけ、大阪で開かれたライブでアン・チファンさんとともに披露した。その後、CD化され昨年、各地の同胞の集まりや朝鮮学校で披露されたり、歌われだした。

 記者が初めて耳にしたのは、京都・右京青商会の結成大会が開かれた京都朝鮮第2初級学校だった。徳山朝鮮初中級学校の創立45周年のイベントでも歌われ、青商会のフォーラムが開かれた広島では、大合唱となった。

 また、神戸朝高合唱部の部室で楽譜を発見した時は、アンさんらのライブで初めて歌が世に出た瞬間に立ち会った者の1人として、「ここにもある!」とうれしくなった。

 1948年、GHQの指示を受けた日本政府は学校閉鎖令を出し、解放後、雨後の筍のように各地に建てられた朝鮮学校をつぶしにかかった。その翌年には総聯の前身である朝聯を強制解散させた。

 当時、朝鮮学校の教師だった作者の許南麒氏は48年4月15日、東京・京橋公会堂で開かれた朝鮮人教育不法弾圧反対学父兄大会で朝鮮学校への深い愛情と誇りを込め、この詩をよんだ。許氏は教え子を「同志」と呼び、朝鮮学校を祖国を学べる「たったひとつのウリハッキョ」とうたった。その思いが時空を越えて伝えられている。

 工場の跡地や同胞の家を教室にし、閉鎖後も山や野原で続けられた民族教育。

 詩は曲となり、より多くの人と心をつなげた。民族教育の原点に希望を託す人々を。(慧)

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