春・夏・秋・冬 |
とうとう起こってしまったというべきか。同時多発テロの直後から、中東や南アジア系住民への暴行や迫害が過熱化する米国で、パキスタン系とインド系の男性が射殺される事件が起きた。「目には目を」のハムラビ法典を地で行くようだ
▼ブッシュ政権はテロ発生当初から、「これは戦争」だとして報復攻撃に向けて着々と準備を進めている。だが、憎しみは新たな憎しみしか生まないように、報復はさらなる報復しか呼ばない。もちろん、テロ行為は断じて許されないが、武力による報復では決して解決にならない ▼そんな中、米歌手のマドンナはコンサート会場に詰め掛けた2万人の聴衆を前に、「暴力は暴力を生むだけ」と報復攻撃反対の意思を表明した。米国民の圧倒的多数が軍事行動を支持する状況では、勇気のいる行動だ ▼「正義と平和の原則に従って」と訴えたのはローマ法王。NATO加盟国のフランスのジョスパン首相も、「われわれはイスラム諸国との戦争状態にあるのではない」と懸念を表明している。日本でも、平和、護憲、宗教団体などが、「テロにも報復にも反対」と国会周辺でデモ行進した ▼日本の戦争責任資料センターのボランティアスタッフはこう主張する。「平和を愛し武力による報復に反対するすべての人が声をあげ、自国の政府を動かし、国連に働きかけ、周囲に呼びかけて、この問題が武力ではなく法によって裁かれるよう働きかけよう」。折に触れて民主主義、法治主義を唱えてきた米国。世界中の平和を愛する人びとが、その出方を見守っている。(聖) |