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「ヒャン」で見えた民族音楽の居場所

朱宝覧


 7月14日、東京・渋谷のQUONを皮切りに「ヒャンV」のライブが始まった。金剛山歌劇団器楽部の若手メンバーによるバンド「ヒャン」によるもので7月21日には長野で、今月25日には埼玉の浦和ワシントンホテルで行われる。今春、同劇団を退団したが、結成当初から携わっている縁で、メンバーの一員としてライブに出演している。

 自分たちなりの民族音楽を表現してみようという思いが「ヒャン」の始まりだった。「響」「郷」「香」「向」…。「ヒャン」というバンド名にはメンバーそれぞれの思いが込められている。

 今日、民族芸術に対する同胞のニーズは刻々と変化している。その変化は、3世のわれわれ自身のものでもある。

 民族芸術は、在日同胞が民族性を守っていくために欠かせない貴重なものだ。しかし、同胞から真に求められなければ、またニーズに沿った新しい形を提示しない限り、その存続は難しい。現状を打破したいという団員の思いが「ヒャン」を生んだ。

 ライブを通じて同胞社会における自分の、また民族音楽の居場所を探すことができたように思う。とくに長野公演を通じてそのことを強く感じた。

 この公演は、以前からメンバーと交流のある松本市在住の金鶴仙さんの尽力により開かれたもので、当日は同胞、日本市民、外国人ら180人が客席を埋めた。

 金さんは公演が多くの観衆に感動を与えたと喜んでくれ、公演後、メンバーに長文の手紙を送ってくださった。「あなたたちの公演を通じて人々を感動させる音楽の 力 を感じた」――。メンバー1人1人にあてたメッセージに目頭が熱くなった。

 なぜ私たちをこんなにも温かく迎え入れられるのだろう…。金さんの手紙を読みながら私たちの活動を理解し、応援し、助けてくれる同胞の「サラン(愛)」を胸に深く刻んだ。その根底には子ども、民族教育、組織に対する熱い思いがある。同胞の支えがあって聴衆との一体感、感動が生まれることをかみしめる思いだった。

 最近、当初予定になかった京都、岡山でもライブが決まった。同胞社会で「ヒャン」が広がりを持ち始めている。当初から願い続けてきたことだけに本当に嬉しい。

 同胞の期待に応えるべく、今後も同胞の心に溶け込む音楽作りに取り組みたいと思っている。(チュ・ボラン、東京都・小金井市在住、30歳)

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