座談会

今まで以上に民族を意識

英国語学研修で学んだこと― 朝鮮大学校外国語学部3年生


 英国で約1ヵ月間の語学研修を行った朝鮮大学校外国語学部3年生の39人。熱心に英語を学ぶ一方、同胞社会とはまったくかけ離れた環境で、今まで以上に「在日朝鮮人」であることを強く意識したという。研修期間を振り返りながら、4人に話し合ってもらった。(李賢順記者)

 ―研修の一番の目的は語学力のアップだったと思うが

 李昌導(以下昌)  …一人ひとりがホームステイし、ラジオから流れるニュースや新聞、学校の休み時間までもすべて英語しか通じない環境に置かれた。授業で学ぶだけでなく、日常生活自体が英語漬けだったわけだ。おかげでまず耳から慣れて言葉を覚え、英語を使って人とのコミュニケーションをはかれるようになった。

 李憲吉(以下憲)  …一緒に授業を受けた各国の留学生たちと英語で雑談する過程で、流ちょうには話せなくてもだんだん意思の疎通をはかれるようになった。英語の必要性も否応なしに肌で感じた。

 高ウンイ(以下ウン)  …当り前だけど、イギリスでは授業がすべて英語で行われたので、講義や質問内容を理解しようと必死だった。その分「学びたい」という意欲に満ちあふれていたし、自分でも驚くほどの集中力を発揮できた。

 それでも、朝鮮に関する知識がない人たちに自分の立場や国のことを説明しようとしたら単語が出てこない。今までの勉強では不十分。もっと真剣に学ばなくてはならないということに改めて気づかされた。

 李由紀(以下由)  …私は日本語を専攻しているので元々、英語が苦手だったが、生活自体が英語中心だったので、英語を遠ざけず自然に受け入れることができた。

 ―ホームステイ先での生活や、観光地での発見は

 由  …ホストファミリーとの思い出は多い。ファミリー宅に到着した翌日が、その家の長女の誕生日だということで、日曜日に一家と近所の遊園地に遊びに行った。

 また、3歳と8ヵ月の子どもたちが洗礼を受けたので、その祝賀パーティーにも参加した。イギリス人は家庭の輪をとても大切にしていると感じた。

 昌  …ホストファミリーにはいろんなタイプがあると思う。僕がお世話になった家庭はシングルマザーで、海外の学生の受け入れにとても慣れていたらしく、まったく干渉されなかった。(笑)

 ウン  …観光地ではないけど、テニスをしているので、ずっと行ってみたいと思っていたウィンブルドンでの試合を観戦した。夢のようだった。ミュージカル「キャッツ」も観に行った。

 由  …私は「オペラ座の怪人」を観た。ほかにフランスのルーブル美術館やイタリアのウフィッツィ美術館など、目に飛び込んでくる建造物の素晴らしさに感動した。

 憲  …僕が一番驚いたのは、屋外のトイレがすべて有料だったことだ。

 ―他国の留学生と接する過程で感じたものは。また、南朝鮮の学生も多くいたようだが

 ウン  …私のクラスには10代後半の学生が多かったが、朝鮮が分断されている事実すら知らない人がいて、ほとんどがアジアといえば日本、中国、韓国しか思い浮かばないようだったことがショックだった。だから、私は常に「在日朝鮮人」の存在を周りの人たちにアピールしようと努めた。

 南朝鮮の学生と統一に対する思いや民族教育のことを話したら、とても感心された。自分から「発信」することは大事だと思う。

 昌  …僕たちは一歩、世界に踏み出すと、「日本から来た」という程度で「在日朝鮮人」であることになんの関心もしめされないし、その存在すらほとんど知られていない。でも、みんな自分の国に対しては、「どこの国よりも一番」と驚くほどに強い誇りを抱いている。異国に生きている分、自分の民族や国についてもっとよく知り、僕も、他国の人に負けないくらいの誇りを持ちたいと思った。

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